街中ではたくさんのハトを見かけるのに、ヒナを見た記憶がほとんどない…一度でも不思議に思った人は多いはずです。
実際、ハトのヒナは幻とも言われ、人前に姿を現すことがほとんどありません。
その背景には、生態の特徴だけでなく安全な巣作りへの徹底したこだわり、そして法律や衛生面の問題までが複雑に関わっています。
今回は、なぜハトのヒナを見ないのか、その本当の理由を紹介します。
ハトのヒナはどこで育てられている?
ハトのヒナが人前に姿を見せない理由の多くは、親鳥の徹底した隠蔽性にあります。
ハトはヒナを守るため、とにかく人の目が届かない場所を巣作りの条件に選びます。
建物の奥まった部分や、立ち入りできない高架の裏、ベランダの物陰など視界に入りにくい場所ばかりが選ばれているのです。
私たちが普段ハトの巣をほとんど見ないのは、親鳥が時間をかけて安全な場所を探し続けた結果なのです。
さらに、ハトは孵化後の子育てにも非常に神経質です。
ヒナはピジョンミルクと呼ばれる特別な栄養分で育てられますが、この期間はヒナが外に出ることはありません。
親鳥は交代でエサを与え、巣の中で完全に保護します。
ヒナは弱く、動きも小さく、もし人目につけば外敵に狙われやすいため、親鳥はひたすら巣にこもりヒナをしっかりと抱え込んだまま成長させるのです。
こうした生態の積み重ねにより、私たちがハトのヒナを見る機会は限りなくゼロに近くなります。
巣立つ頃にはすでに大人の姿へと成長
私たちがヒナを見かけないもう一つの理由は、ハトの成長スピードの速さにあります。
生まれてから数週間の間、ヒナは巣の中にこもり、ピジョンミルクと餌を与えられながら一気に成長します。
巣立ちの時期にはすでに体つきがしっかりしており、サイズも成鳥と大差ありません。
羽毛も整っているため、ひよこらしい姿を目にすることはほとんどありません。
つまり、私たちは巣立ち直後の若いハトを見ても、それがヒナだと気づかないまま通り過ぎてしまっているのです。
ハトの子供が地面をヨチヨチ歩いている…という光景が存在しない理由はここにあります。
見つけても触ってはいけない法律と衛生面の理由
めったに見られないハトのヒナですが、もし偶然見つけたとしても、触るのは絶対に避けなければなりません。
理由のひとつは、ハトが「鳥獣保護管理法」によって守られている動物だからです。
許可なく巣に触ったり、ヒナを保護したりするだけで法律違反になる可能性があり、善意で保護したつもりでも結果的に厳しい罰則が適用されるケースもあります。
また、衛生面の問題も無視できません。
ハトの体やフンにはサルモネラ菌やカンピロバクターなど、感染症を引き起こす可能性のある菌が付着していることがあります。
通常の生活で感染することは稀ですが、直接触ることでリスクが高まるのは確かです。
免疫の弱い人や子どもが触れるのは特に避けるべきでしょう。
もし明らかにケガをしている場合は、自治体や野生鳥獣保護センターに連絡し専門家に引き渡すことが推奨されます。
まとめ
ハトのヒナが町で見かけられないのは、不思議な現象ではなくハトの生態そのものに理由があります。
巣立つ頃にはすでに成鳥に近い姿へと成長しているため、私たちはヒナをヒナと認識できないまま見過ごしてしまうのです。
ハトのヒナが幻と言われるのは、こうした多くの要因が重なっているからこそなのです。
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