私たちが秘密の関係を続けること数週間。
毎日が刺激的で、彼とのひとときが私の生活に甘い調和を与えてくれた。
しかし、一方で日常と非日常の狭間で揺れ動く私の心は、それが永遠に続くことを疑っていた。
何よりも、私たちはそれぞれの家庭を持つ者たち。
それぞれの場所で待つ家族がいる。
罪悪感と愛情の狭間
ある夜、彼とバーで過ごした後、私たちはマンションに戻った。
エレベーターの中、彼の胸に身を寄せながら、私は突然の恐怖に襲われた。
彼の優しさと一緒に生まれた甘い虚無感。
それは私たちの秘密がばれる日が近いことを示していた。
「高橋さん、私たち、これからどうなるんでしょう…」
私の声は小さく、震えていた。
彼は私の髪をなで、そっと唇を私の耳元に寄せた。
「杏里さん、僕たちは今、必要な人と一緒にいる。それだけでいい。明日のことは、明日考えよう。」
その晩、彼の強さと優しさに身を任せながら、私は心の中で誓った。
この関係がどれほどの困難に直面するとしても、彼との時間を最後まで守ると。
それからも私たちの関係がばれることはなかった。
しかし、予感は的中し、彼の奥さんが彼と私の間に介入してきた。
私への疑いの目を向ける彼女の姿に、私は自分自身と向き合うべき時が来たと感じた。
彼女に対する罪悪感と、彼に対する愛情が胸の中で激しくぶつかった。
それから私は彼に向き合い、全てを話すことに決めた。
「私たちはお互いの家族を傷つけてしまっている。それでも、私はあなたを愛してしまった。しかし、私たちの関係はここで終わらせるべきだと思います。」
彼の瞳に映る私は、家事に追われる普通の主婦ではなく、堂々と自己を主張する勇敢な女性だった。
それから私たちの関係は終わった。
彼とは別れ、家族に専念することにした。
でも私は後悔していない。なぜなら、彼と過ごした時間は私に自分を見つめ直す機会を与えてくれた。
私は自分の欲望を理解し、自己を受け入れることができた。
そして何より、家族の存在の大切さを再認識することができた。
今でも私は彼を思い出すことがある。
だけどそれは、もう過去の出来事。
私は前を向いて生きていく。
それが私の選んだ道だから。
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