大正から昭和初期にかけて、華やかさだけではなく知性や気品、そして時に性の枠を超える強さをまとった女優、彼女たちは映画という新しい文化の中で、自らの美しさを武器にしながらも時代の価値観を静かに揺さぶっていきました。
今回は、戦前の大正から昭和初期に活躍した女優を3人紹介します。
松井千枝子

- 出身地|東京都
- 誕生日|1899年12月4日
松竹キネマのマドンナ女優として人気を博した松井千枝子さんは、浅草の医師の娘として生まれたインテリ女優、東京府立第一高等女学校を卒業し日本画を山本昇雲に学び、短歌や書にも親しむなど教養あふれる女性でした。
1924年に映画デビューし翌年松竹に入社、主演作『春の雨』『哀愁の湖』は彼女自身の原作によるもので、芸術と文学を融合させたその表現力は、当時の日本映画に新風を吹き込みました。
しかし、病弱な体に苦しみながらも創作を続け、1929年にわずか29歳で夭折、短い生涯の中に知性と品格が息づく静かな美を刻みました。
- 「彼女の写真を見ると、当時の空気まで伝わってくる。柔らかくて凛とした美しさですね。」
- 「大正の女性らしい奥ゆかしさがある。外見よりも中身の美しさを感じます。」
水の江瀧子

- 出身地|北海道
- 誕生日|1915年2月20日
男装の麗人として知られる水の江瀧子さんは、松竹少女歌劇団(SKD)のトップスター、タキシードに身を包み颯爽と舞う姿はターキー様の愛称で男女問わず熱狂的な支持を集めました。
女性が男性役を演じることで、性の境界を超越し強くそしてしなやかに生きる女性像を提示、その存在は当時の日本社会における女性のあり方に大きな影響を与えました。
戦後は映画やテレビにも進出し、プロデューサーとしても成功、気品とユーモアを兼ね備えた彼女は、まさに昭和芸能界の象徴と呼ぶにふさわしい人物でした。
- 「ターキー様のスーツ姿は今見ても惚れ惚れする。まさに時代を超えた美人。」
- 「強くて知的で美しい。その姿勢が今の時代にも通じるカッコよさを感じます。」
入江たか子

- 出身地|東京都
- 誕生日|1911年2月7日
昭和初期を代表する映画女優・入江たか子さん、名家に生まれながらも芸能の道を選び、モダンガール(モガ)女優として1930年代に一世を風靡しました。
当時としては画期的な美容整形(二重まぶた手術)を受けたことでも知られ、自らの美を追求する姿勢は美の改革者として注目を浴びます。
代表作『滝の白糸』(1933)で見せた繊細かつ情熱的な演技は、彼女の才能を決定づけました。
戦後は、化け猫女優として妖艶な役を演じつつも、常に上品さを失わないその存在感は唯一無二、入江さんの気品と華やかさは昭和の銀幕に永遠の光を残しました。
- 「入江たか子さんの横顔のラインが本当に美しい。昔の映画なのに、どこか現代的なんです。」
- 「彼女の登場シーンには空気が変わるような緊張感がある。まさに昭和の女神。」
まとめ
映画黎明期の日本には、時代や性別の枠にとらわれない女性たちがいました。
彼女たちは、ただ美しいだけでなく、美しく生きるということを自らの姿で示してくれた存在です。
時を超えて今も語られる理由は、外見ではなくその生き方の凛とした強さにあるのかもしれません。
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