まんが日本昔ばなしって番組を覚えていますか?
この番組には、子供向けの昔話ばかりではなく、気が滅入るような話も多く含まれていました。
今回は、その中でも特に印象的な3つのエピソードを紹介します
三本枝のかみそり狐(福島県)
昔、福島県のある村には「三本枝」という竹藪があり、そこには人を化かすキツネが住みついていました。
村人たちはそのキツネを恐れていましたが、「彦べえ」という若者だけは信じていませんでした。
ある夕方、彦べえは一人で竹藪に出かけました。
すると、暗い竹藪の中に赤ん坊を背負った娘が一人で歩いているのを見つけました。
彦べえは何となく怪しいと思い、娘の跡をつけていくと、「おっかあ、泊まりに来たよ」と、娘は一軒のあばら家へ入って行きました。
そして、彦べえは家へ入ると、「婆さん、娘はキツネで赤ん坊は赤カブだ」と叫びました。
おばあさんは、「これは私の娘と可愛い孫だ」と言ったが、彦べえは赤ん坊をおばあさんから取り上げると、いろりの火に投げ込んだのです。
ところが、彦べえの予想に反して、赤ん坊はキツネの姿になることはなかったのです…。
驚いた彦べえは、恐ろしくなって逃げ出すと、孫を奪われたおばあさんの顔がぐるぐる回転し、恐ろしい形相に変わり「お前の命を取ってやる」と彦べえを追いかけてきました。
彦べえは命からがら山寺に逃げ込み、かまってくれるように頼みました。
山寺の坊さまは、彦べえを本堂に隠し、追ってきた婆さまをなだめて、その場をなんとかやり過ごしてくれました。
そして坊さまは「坊主になりなさい」と言い、彦べえの髪をカミソリで剃り落としたのです。
朝、彦べえは目を覚ますと、そこは竹藪の中で、髪の毛は全てむしり取られ、頭は血だらけでした。
全ては三本枝のキツネたちの仕業だったのです。
百物語(長野県)
長野県のある村に、庄屋の息子、刀屋の息子、寺の小坊主がいて、この三人は暇を見つけては悪さばかりしていました。
ある日、三人は寺に集まって何か面白いことがないかと相談、すると小坊主が、村の者を集めて「百物語」をやろうと言い出しました。
村人たちが順番に怪談を話し、99本目のロウソクが消えると、小坊主が悲鳴を上げました。
幽霊と人魂が現れ、村人たちは驚いて逃げ出しましたが、それは三人のいたずらでした。
村人たちが全員逃げ出した後、三人はまた酒を飲み始めました。
しばらくするとどこからか、生臭い風が吹き、百本目のロウソクが消えたのです。
気がつくと女が立っている、こんな時間にどういうことだ?と思っていると、その女の口が大きく裂け、ゲラゲラと笑い出しました。
小坊主は気絶、刀屋の息子は逃げようとして戸板に頭をぶつけて気絶、庄屋の息子は転がるように山寺の道を駆け下り家に逃げ帰ったのです。
小坊主は気がふれて里へ帰り、刀屋の息子はショックから半病人になって寝込んでしまいました。
庄屋の息子は無事でしたが、父親にこっぴどく怒られ、お宮さんに願をかけてもらいにお参りに行かされました。
その後、庄屋の息子は毎日お参りをしていましたが、ある日、可愛い女の子に出会います。
庄屋の息子が声をかけると、「遠くの町へ売られる途中に逃げてきたのだと」言いました。
女の子の可愛さに下心がわいた息子は、娘を神社に誘って、これから自分が面倒を見てやろうと誘いました。
すると娘は「こんな私でも?」と言って振り向くと、娘の顔は百物語の時に現れた女の顔でした…。
それ以来、庄屋の息子も気が触れたまま一生を過ごすことになりました。
キジも鳴かずば(長野県)
長野県の犀川(さいがわ)という川のほとりにある村では、毎年秋になると川が氾濫し、村人を困らせていました。
この村に住む弥平とお千代という親子は、貧しいながらも仲良く暮らしていました。
ある年の秋、お千代が重い病にかかってしまします。
家は貧しく、医者も呼ぶことができません。
病の床で、お千代はかつて一度だけ食べたことのある、小豆まんまが食べたいと言いました。
小豆を買うお金のない弥平は、弥平は地主の蔵から米と小豆を盗み、小豆まんまをお千代に食べさせました。
その後、お千代は元気を取り戻しましたが、手まり歌で「あずきまんまたべた」と歌っているところを村人に聞かれていました。
すると、その夜から雨が激しく降り始め、川が氾濫しかけます。
村人たちは、神の怒りを鎮めるために、罪人を人柱にすることにしました。
誰を人柱にするかということになった時、お千代の手まり歌を聞いた者が、弥平が盗みを働いたことを話したのです。
弥平は人柱にされ、川のほとりに埋められました。
何日も泣き続けたお千代は、ある日を境いにピタリと泣き止み、それ以後一言も口を聞かなくなってしまいました…。
ある日のこと、猟師がキジの鳴く声を聞いて鉄砲で撃ち落としました。
キジの落ちたところに向かうと、お千代はキジを抱きしめ、「キジよ、お前も鳴かなければ撃たれないですんだものを」と呟き、姿を消しました。
まとめ
これらの話は、子供向けのアニメとは思えないほど恐ろしいものでした。
それぞれの話に共通するのは、罪や欲望が引き起こす恐怖と、それに対する因果応報の描写です。
特に、視覚的に強烈なシーンが多いため、子供心に深く刻まれるトラウマとなることが多かったのでしょう。
昔話の奥深さと、日本独特の怖さを感じることができるエピソードです。
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