サッカーの歴史の中で忘れられない悲劇の一つに「ヒルズボロの悲劇」があります。
リバプールFCとそのファンにとって、この事件は単なる試合の出来事を超えた深い意味を持っています。
そして、この悲劇を象徴するのが「You’ll Never Walk Alone」というアンセムです。
この曲がどのようにリバプールの象徴となり、ファンや選手たちにとって特別な存在となったのか、その背景を紹介します。
ヒルズボロの悲劇とは?
1989年4月15日、FAカップ準決勝で起こった「ヒルズボロの悲劇」は、サッカーファンにとって忘れられない痛みとなりました。
この日、シェフィールドのヒルズボロスタジアムで行われたリバプールFC対ノッティンガム・フォレストの試合で、観客が過密状態となり、96人が命を落とし、766人が負傷しました。
スタジアム外に溢れた約2000人のファンが無理に押し込まれ、安全対策が不十分、警察の誘導ミスが重なり、スタジアム内に過密状態が発生、立ち見席(テラス)が圧迫され、酸欠や圧迫死を引き起こしたのです。
当時、メディアはリバプールサポーターに責任を押し付けるような報道を行い、特に「ザ・サン」はフーリガニズムを理由に、サポーターの飲酒や暴力行為が悲劇の原因であると報じました。
しかし、遺族を中心としたグループが真実を追求し続けた結果、2016年に行われた審問で、警察の過失がこの惨事の主な原因であることが正式に認められました。
この結果は、リバプールにとって大きな意味を持ち、街全体がザ・サンの不買運動を行い、クラブも2017年に同紙の記者をスタジアムから締め出す決定をしました。
バプールのファンや市民にとって、ヒルズボロの悲劇は単なる事故ではなく、社会的な不正義と戦い続けた証でもあります。
「You’ll Never Walk Alone」に込められた思い
この悲劇をきっかけに、リバプールのアンセム「You’ll Never Walk Alone」は特別な意味を持つようになりました。
もともと1945年のブロードウェイミュージカル「回転木馬」で生まれたこの曲は、1960年代にリバプールFCのスタジアムでサポーターによって歌われ始め、クラブの象徴でした。
この曲は、困難な時期においてもリバプールFCとそのファンを支え続けています。
特に、ヒルズボロの悲劇の後、この曲は追悼の歌として、リバプールの試合前にスタジアム中に響き渡ることが恒例となり、世界中のサッカーファンからも共感を呼んでいます。
このアンセムは、ヒルズボロの悲劇を経験したサポーターたちにとって、まさに「祈りの歌」となりました。
悲劇の後も、リバプールのサポーターたちは団結し、この曲を通じて亡くなった仲間たちに思いを馳せています。
「You’ll Never Walk Alone」という言葉には、「決して一人じゃない」「共に歩んでいく」というメッセージが込められており、リバプールFCを愛する人々の心をつなぐ存在です。
そして、リバプールFCだけでなく、このアンセムは他のクラブやファンにとっても特別な存在です。
例えば、ドルトムントやセルティック、JリーグのFC東京といったクラブでも試合前に「You’ll Never Walk Alone」が歌われ、団結と支え合いの象徴としての役割を果たしています。
You’ll Never Walk Alone
When you walk through a storm
嵐の中を歩む時
Hold you head up high
頭を高く上げ
And don’t be afraid of the dark
闇を恐れるな
At the end of the storm
嵐の果てには
There’s a golden sky
And the sweet , silver song of a lark
ひばりがなく黄金の空が待っている
Walk on through the wind
歩き続けろ、風の中を
Walk on through the rain
歩き続けろ、雨の中を
Though your dreams be tossed and blown
たとえ、君の夢が吹き飛ばされようとも
Walk on , walk on with hope in your hearts
歩き続けろ、希望を胸に
And you”ll never walk alone
そして、君は一人じゃない
You”ll never walk alone
君は一人じゃない
Walk on , walk on with hope in your hearts
歩き続けろ、希望を胸に
And you”ll never walk alone
そして、君は一人じゃない
You”ll never walk alone
君は一人じゃない
まとめ
ヒルズボロの悲劇はサッカー史上最も痛ましい出来事の一つであり、その記憶は今でもリバプールFCとそのファンの心に刻まれています。
この曲を歌うことで、彼らは決して一人ではなく、クラブや仲間と共に歩んでいくことを確認し合っています。
このアンセムはただの応援歌ではなく、歴史と共に歩んできた象徴なのです。
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