柳原愛子（なるこ）の名前を聞いたことがある人は多くないかもしれませんが、彼女の存在は皇室にとって欠かせないものでした。
明治天皇の側室として大正天皇を生んだ愛子は、歴史的に重要な役割を果たし、皇室存続の危機を救ったと言っても過言ではありません。
今回は、そんな柳原愛子の壮絶な人生を紹介します。
側室として皇室存続の危機を救った柳原愛子
柳原家は鎌倉時代から続く由緒ある家系です。
戦国時代には一部領地を失いながらも、なんとか生き残ったという背景がありました。
江戸時代には武家伝奏や議奏という幕府や天皇との連絡役を務めるなど、重要な役職についていたため、柳原家の名前は宮中でも知れ渡っていました。
そんな家柄に生まれた愛子は、11歳で宮中に仕えることになります。
最初は皇太后宮小上臈として出仕し、その後、明治天皇に近い存在となり、側室となるまでの昇進を果たします。
これだけ見ると順風満帆に聞こえますが、当時の宮中での生活は厳しく、女官たちは天皇の寵愛を得るために競い合う環境でした。
明治天皇との関係と子供たち
柳原愛子が明治天皇の側室となり、最初に授かった子供は第二皇女・薫子内親王でした。
しかし、この子は早世してしまいます。
その後、第二皇子・敬仁親王も産まれましたが、この子もまた若くして命を落としました。
次に生まれたのが、後の大正天皇となる嘉仁親王です。
彼だけが成人し、皇位を継承することになります。
当時の皇室は幼少期に命を落とす子供が多く、皇位継承の危機に直面していました。
明治天皇には複数の側室がいましたが、愛子以外の多くの子供が成長することなく亡くなっていったため、柳原愛子の存在がいかに重要であったかがわかります。
宮中での生活と苦労
柳原愛子は単に側室としてだけでなく、宮中の女官たちのトップとしても活躍しました。
43歳で典侍という役職につき、宮中での筆頭女官として新入りの指導も行っていました。
彼女の優しさと気配りは宮中でも有名で、夜勤当番の女官におやつを配ったり、自分に贈られた贈答品を下働きの女性たちに分け与えたりしていたと言います。
こうした行動から、愛子は女官たちから深く慕われていました。
しかし、その一方で彼女もまた孤独を抱えていました。
特に、大正天皇を産んだ後、すぐに子供と引き離されるという母子分離の制度は、愛子にとって精神的に大きな負担となりました。
当時の宮中では、皇子や皇女が母親と長く一緒に過ごすことは少なく、愛子もまた息子との時間を十分に持てなかったのです。
貞明皇后との絆
そんな愛子ですが、後に大正天皇の妃となった貞明皇后（九条節子）との関係は特別なものでした。
貞明皇后が皇太子妃として宮中に入った際、柳原愛子は彼女の教育係の一人として任命されました。
貞明皇后は「実の母のように温かく接してくれた」と感謝し、愛子に対して深い敬意を持っていました。
この関係は、愛子が88歳の米寿を迎えた際、貞明皇后が布団を贈ったり、信濃町の屋敷を訪れ、感謝を述べたというエピソードからも伺えます。
また、大正天皇が亡くなる際には、貞明皇后の特別な計らいで、愛子は最後の瞬間まで息子と一緒に過ごすことが許されました。
この時、愛子は涙を流しながら天皇の最期を見守ったと言われています。
愛子の晩年とその遺産
柳原愛子は1943年、88歳でこの世を去りました。
その生涯は、皇室存続の危機を救い、宮中での信頼を勝ち得た女性として語り継がれています。
彼女は常に周囲に気を配り、優しさを持って接していたため、宮中の多くの人々から慕われました。
特に、貞明皇后との強い絆は、愛子の人柄をよく表しているエピソードです。
彼女が亡くなった際には、天皇や皇后も使者を派遣し、その死を悼みました。
彼女の墓は東京都目黒区の祐天寺にあり、今もなお彼女を敬う人々が訪れています。
※画像｜Wikipedia より引用
まとめ
柳原愛子は、明治天皇の側室として寵愛を受けた彼女は、多くの子供を産みながらも、成人したのは大正天皇ただ一人。
母子分離という制度や、宮中での厳しい生活に苦しみながらも、彼女は宮中の女官たちに優しく接し、皇室に欠かせない存在でした。
彼女の生涯は、皇室の裏側にある厳しさと愛情を象徴するものとして、今も語り継がれています。
