実話をもとにしたドラマ『1リットルの涙』には、原作には存在しない恋人が登場します。
なぜ、あれほど切実な闘病記に恋愛要素が加えられたのでしょうか?
感動的だった一方で、原作改変では?と違和感を覚えた人も少なくありません。
しかし、その選択の裏には、制作側の判断だけではないある人物の切実な願いがありました。
原作『1リットルの涙』は恋愛を書かない実話だった
原作『1リットルの涙』は、モデルとなった木藤亜也さんが闘病中に綴った日記をまとめたノンフィクションです。
そこにあるのは、病気への恐怖や将来への不安、家族への感謝と葛藤といった、極めて個人的で生々しい感情でした。
一方で、原作には明確な恋人や恋愛関係の描写はほとんどありません。
それは恋が存在しなかったというより、病気の進行によって普通の青春を語る余裕すら奪われていった現実があったからでしょう。
原作はあくまで、脚色のない生の記録であり、読者の感情を操作するための物語ではありませんでした。
ドラマで描かれた恋人は実在しない存在
2005年放送のドラマ版では、主人公・池内亜也(沢尻エリカ)を支える存在として、錦戸亮演じる青年・麻生弘樹が登場します。
結論から言えば、この人物は実在しません。
原作にもモデルとなる恋人はおらず、ドラマの脚本によって生み出された創作キャラクターです。
放送当時は、「実話なのに恋愛を入れるのは違う」「本人を美化しすぎている」といった批判も起こりました。
実話ベースであるがゆえに、視聴者が事実とのズレに敏感になったのも自然な反応だったと言えるでしょう。
恋人を入れた理由は母の願いだった
では、なぜ制作側はあえて恋人という設定を加えたのでしょうか?
その背景にあったのが、亜也さんの母親の強い想い…「せめてドラマの中だけでも、娘に恋をさせてあげたかった」現実では病気によって多くの選択肢を奪われていった娘、誰かを想い想われるという普通の人生を、物語の中でだけでも歩ませてあげたい、そんな母の願いを制作側は真正面から受け止めました。
恋愛要素は視聴率のための装置ではなく、事実では描けなかったもう一つの可能性を表現するための選択だったのです。
その結果、『1リットルの涙』は単なる闘病ドラマではなく、人生そのものを描く作品へと昇華されました。
まとめ
『1リットルの涙』で原作に存在しない恋人が描かれた理由には、娘に普通の青春を生きさせてあげたかった母の切実な願いがありました。
原作は真実の記録であり、ドラマはその真実を多くの人に届けるための再解釈です。
どちらかが正しいのではなく役割が違うだけ、そう考えるとこの改変は裏切りではなく、深い愛情から生まれた選択だったと言えるでしょう。
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