部屋は広いほうがいい、かつては当たり前だったこの価値観が、いま東京都心では変わりつつあります。
わずか3畳、専有面積9平方メートルという激せま極小アパートが、入居率99.9%という人気を誇っているのです。
なぜ若者は、ここまで狭い部屋を選ぶのでしょうか…。
3畳・9㎡でも成立する都心型住居の実態
JR四ツ谷駅、恵比寿、中目黒、代々木上原、都内屈指の人気エリアに点在するのが、3畳ワンルームの激せまアパートです。
部屋の広さは約9平方メートル、玄関は2人立てばいっぱい、共用廊下は幅約90cmと徹底的に無駄を省いた設計が特徴になっています。
最大の特徴は天井高約4mのロフト構造で、寝る・くつろぐ空間を縦に分離することで、3畳でも生活が成り立つよう工夫されています。
狭いけれど不便ではない、これが多くの入居者に共通する感想です。
入居率99.9%が示す選ばれる理由
人気の理由は明確で、家賃が周辺相場より約2〜3万円安く、築浅・新築が多く、清潔感がある物件が多いのも特徴です。
たとえば四ツ谷で6万7000円台、恵比寿でも7万円前後、「この立地で、この家賃なら狭さは許容できる」と考える若者が多いのです。
広さよりも、時間・立地・コストを優先する価値観が、確実に広がっています。
実際の入居者の生活を見ると、「我慢して住んでいる」という印象はあまりありません。
むしろ、狭さを前提に暮らしを最適化し、ある入居者はテレビを置かずプロジェクターを壁に投影、別の入居者は洗濯機の上を食事スペースとして活用しています。
収納が限られるため、服は最小限に抑え、物を増やさない生活が自然と身についていきます。
「狭いけど、帰って寝るだけなら十分」「家にいる時間が短いから、立地のほうが大事」こうした声から見えてくるのは、部屋=長時間くつろぐ場所という発想そのものが変わりつつある現実です。
家賃高騰が生んだ新しい妥協
この流れの根底にあるのが、東京都心の深刻な家賃上昇です。
大手不動産情報サービスによると、東京23区の単身向け賃貸の平均家賃は約12万円、前年比で16%以上上昇しています。
一方で、初任給は上がっているとはいえ、家賃の伸びには追いついていません。
企業の住宅補助も限定的で、若者は広さ・新しさ・立地のどれかを諦めざるを得ない状況です。
その結果、立地を取る人は「極小」へ、広さを取る人は「築古」へ、という二極化が進んでいるのです。
専門家は、今後は生活水準をやや落としながら暮らすスタイルが一般化すると指摘します。
まとめ
激せま・極小アパートの人気は、若者の我慢ではなく合理的な選択の結果といえるでしょう。
広さを犠牲にしても、時間とお金を守る、住めば都という言葉の意味は、いまや最適化されたミニマル生活へと変わりつつあります。
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