「洗脳」「マインドコントロール」という言葉は、どこか映画や陰謀論の世界のものに聞こえるかもしれません。
しかし冷戦期、民主主義国家アメリカが実際に人体実験を行っていた事実が存在します。
それが「MKウルトラ計画」、この計画は1970年代に中止されたとされていますが、近年になっても「自分は被害者だ」と名乗る人々が集会を開き、声を上げ続けています。
なぜこの問題は、半世紀以上経った今も終わらないのでしょうか…。
国家プロジェクト「MKウルトラ計画」
MKウルトラ計画とは、冷戦期にCIAが極秘裏に進めていた、洗脳・マインドコントロール研究の総称です。
1950年代初頭から1960年代末まで続いたこの計画には、大学、病院、研究所、製薬会社などが関与し、少なくとも54のサブプロジェクトが存在していたとされています。
背景にあったのは、朝鮮戦争で注目された捕虜の洗脳で、アメリカ政府は、敵国のスパイを自白させる、人間の意思を操作する、といった技術を国家安全保障の名のもとに追い求めていきます。
計画を主導したのはCIA内部の科学技術部門で、中心人物は化学者のシドニー・ゴッドリーブ、実験ではLSDなどの幻覚剤、向精神薬、催眠、感覚遮断、電気ショック療法などが用いられました。
最大の問題は、被験者の多くが実験内容を知らされず、同意も得られていなかったことで、第二次世界大戦後に定められたニュルンベルク綱領にも明確に反する行為です。
人間を幼児化させたキャメロン博士の実験
MKウルトラ計画の中でも、特に悪名高いのが、カナダで行われた精神医学実験です。
中心人物は、精神科医ドナルド・キャメロン、彼は世界的に権威ある学者であり、当時は精神医学界のトップに立つ人物でもありました。
キャメロンが行ったのは、治療と称した実験、対象は統合失調症や重度の不安障害、産後うつなどの患者でしたが、次第に軽度の不調で来院した人々にまで広がっていきます。
実験内容は常軌を逸しており、LSDを含む大量の薬物投与、通常の30〜40倍の電気ショック療法、長期間の薬物昏睡、感覚遮断、同じメッセージを何十万回も聞かせ続ける心理操作、これは「デペターニング(人格消去)」と呼ばれ、一度人格を完全に壊し、再構築できるかを試すものでした。
結果は悲惨で、患者たちは記憶を失い、排泄や会話といった基本的な生活動作すら困難になり、人格が変わってしまった人も少なくありませんでした。
文書破棄と今も終わらない被害の問題
MKウルトラ計画は1970年代に内部告発をきっかけに問題化します。
しかし1973年、当時CIA長官だったリチャード・ヘルムズは、関連文書の大半を破棄するよう命じました。
その結果、誰がどこでどのような実験を受けたのか、正確な記録は失われ、この空白が現在まで問題を引きずる原因となっています。
近年、アメリカでは「自分はMKウルトラの被害者だ」と名乗る人々が会合を開き、体験を語り合っています。
その中には、実際の被験者だった可能性がある人もいれば、別の精神的問題を抱えている人もいると考えられています。
重要なのは、誰が本物の被害者かを完全に証明できない状況を、国家自身が作り出したという点です。
さらに、対テロ戦争以降、グアンタナモ基地などで向精神薬や心理操作が尋問に用いられたという証言もあり、同じ構造が繰り返されているのではないか?という疑念は消えていません。
まとめ
MKウルトラ計画は陰謀論ではなく、議会調査と公文書によって確認された、民主国家が犯した実在の過ちです。
洗脳技術は失敗しましたが、その過程で多くの人生が破壊されました。
この問題の本質は、誰の記憶が正しいかではなく、国家が説明責任を放棄したまま人間を実験材料にしたことにあります。
だからこそMKウルトラは、今も終わらず語り続けられているのです。
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