東洋一の別荘地を目指して誕生した兵庫県芦屋市の六麓荘町、日本屈指の高級住宅街として知られ、広大な敷地に建つ豪邸と厳格な景観ルールによってブランドを守り続けてきました。
しかし近年、その六麓荘に異変が起きているといわれています。
中国人富裕層による豪邸購入が相次ぎ、このままではチャイナタウン化するのではないか?という声まで上がっているのです。
六麓荘という特別な街が守ってきたもの
六麓荘町は1928年、大阪の実業家らによって開発が始まり、香港の高級住宅地をモデルに、「東洋一の住宅街」を目標として造成された歴史を持っています。
2007年にはいわゆる「豪邸条例」が施行され、厳格なルールが設けられました。
- 1区画400㎡以上
- 原則2階建てまで
- 緑地率30~40%確保
- 高木・中木の植栽義務
- 屋外照明の配慮
- 工事時間は8時~17時
商業施設は存在せず、街全体が静かな邸宅街として設計されています。
さらに、新築時には町内会への相談や近隣説明会も必要とされるなど、住民自らが街のブランドを守る仕組みが整えられてきました。
その結果、六麓荘は「富豪が住む街」というだけでなく、「景観と秩序が保たれた理想の高級住宅地」として高く評価されてきたのです。
なぜ中国人富裕層が六麓荘を買うのか
近年、六麓荘では海外富裕層、とりわけ中国人による豪邸購入が増えていると報じられています。
その背景にはいくつかの事情があり、中国では土地は国家または集団所有であり、個人は土地そのものを所有するのではなく「土地使用権」という形で権利を持つ仕組みです。
一方、日本では外国人であっても原則として土地の所有権を取得できるので、資産保全の観点から日本の不動産は魅力的に映るのです。
さらに、六麓荘の豪邸は相続税や維持費の負担が大きく、空き家となるケースも少なくなく、売主としては高値で購入してくれる相手がいれば国籍を問わず売却するのが現実です。
相場より高い価格を提示する中国人富裕層が現れれば、取引が成立しやすくなるのも当然といえるでしょう。
また、町内会の協定には「自宅として使用せよ」という規定がないため、別荘や投資目的での購入も可能です。
こうした条件が重なり、六麓荘はグローバル資産市場の一部として注目されるようになりました。
浮かび上がる摩擦と町内会の限界
問題が顕在化したのは、ルール運用をめぐるトラブルです。
報道では、中古豪邸を購入した中国人オーナーがウッドデッキを増築し、工事時間(8時~17時)を守らず朝7時から施工を始めた事例が紹介されました。
さらに、その増築によって緑地率を満たしていない可能性も指摘されています。
新築の場合は町内会への事前相談や説明会が義務づけられますが、中古物件を購入する場合には同様の手続きが不要となるケースがあり、町内会が事前に把握・調整することが難しくなっているのです。
現代社会では私権制限は容易ではなく、条例違反でない限り強く介入することは難しい状況です。
つまり、六麓荘の課題は単純に外国人問題というよりも、資本の自由化と自治の限界がぶつかっている点にあるといえます。
まとめ
六麓荘は現在も日本を代表する高級住宅街であり、その景観やブランドが一気に失われたわけではありません。
しかし、相続問題や空き家、グローバル資本の流入、町内会の権限低下といった要素が重なり、これまでの暗黙の秩序が揺らぎ始めているのも事実です。
六麓荘が守ってきた理想の街という価値を、これからどのように維持していくのか、その答えは住民だけでなく、日本社会全体が向き合うべき課題なのかもしれません。
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