毎朝の通勤電車は、私にとってただの移動手段だった。
しかし、ある日からそれが変わった。
その原因は、彼、拓海の存在だった。
通勤電車の甘い誘惑
彼の姿は、どこかで見たことがあるような、でもはっきりとは思い出せない。
綺麗に整えられた黒髪、端正な顔立ち、そして何よりその深い瞳。
毎朝、彼と何度か視線が交差する。
最初は偶然だと思っていたが、次第にそれは運命的なものに思えてきた。
ある雨の日、私は傘を忘れてしまい、駅のホームで困っていた。
すると、拓海が私の方へ歩いてきて、「一緒に傘をさして行きませんか?」と声をかけてきた。
驚きながらも、彼の優しさに心を打たれ、「ありがとうございます」と答えた。
その日の帰り道も、彼と一緒に傘をさして駅まで歩いた。
途中、彼が「実は、君に何度か声をかけようと思ってたんだ」と打ち明けてきた。
私は驚きながらも、「私も、あなたに興味があったの」と正直に答えた。
次の日、拓海から「今度、お昼に一緒に食事しませんか?」と誘われた。
私は、迷わず「うん」と答えた。そして、ランチの約束をした。
ランチの日、私たちは都心のカフェで、お互いのことをたくさん話した。
彼は、大手企業で働いていて、仕事が忙しい中でも趣味の読書や映画鑑賞を楽しんでいるとのこと。
私も、自分の仕事や趣味について話し、あっという間に時間が過ぎてしまった。
その後も、拓海とは通勤電車での短い時間やランチを共にすることが増えていった。
私たちの関係は、友人以上恋人未満の微妙なものになっていたが、それが私の日常の中で特別な時間となっていった。
しかし、この関係はどこへ向かっていくのだろうか。
私の胸の中には、期待と不安が交錯していた。
次回。後編へ…
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