江戸時代中期、吉原遊郭の華やかな世界で、その名を轟かせた伝説の花魁「瀬川」。
特に五代目瀬川は、その波乱万丈な生涯と驚異的なエピソードで知られています。
2025年放送の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』では、江戸時代の出版業界を牽引した蔦屋重三郎の生涯が描かれます。
その中で、吉原遊郭の伝説的な花魁「瀬川」の名跡を継いだ五代目瀬川、通称「花の井」を小芝風花さんが演じ重要な役割を果たします。
今回は、五代目瀬川の生涯とその背景、そしてドラマでの描かれ方について詳しく解説します。
吉原遊郭と「瀬川」の名跡とは
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吉原遊郭は、江戸時代の日本における公認の遊郭であり、文化や芸術の発信地としても知られていました。
その中で、「瀬川」の名跡は特に高名で、初代から九代目まで存在したとされています。
各代の「瀬川」は、美貌と才能で多くの人々を魅了し、吉原の象徴的存在となりました。
特に、四代目と五代目が有名で、彼女たちの美貌や才能、そして波乱に満ちた人生が多くの人々の関心を集めました。
初代 瀬川
初代(または二代目とされることもある)、の人生は壮絶であり、多くの逸話が伝えられています。
初代瀬川は、もともと医師の娘として生まれましたが、小野田久之進という武士に嫁ぎ、武家の妻として暮らしていました。
しかし、夫が盗賊に襲われて命を落とすという悲劇に見舞われます。
残された彼女は生活に困窮し、最終的に吉原の遊郭・松葉屋に身を寄せ、「瀬川」の名で遊女となる道を選びました。
ある日、彼女は吉原で偶然にも夫を殺した敵と出会うことになります。
その瞬間、彼女の中で復讐の念が燃え上がり、仇討ちを果たしたとされています。
この一件の後、瀬川は遊里を去り、尼となって浅草の幡随院(ばんずいいん)に入り、「自貞(じてい)」と号したと伝えられています。
遊女としての華やかな世界に身を置きながらも、愛と誇り、そして強い意志に満ちたものだったといえるでしょう。
四代目 瀬川
四代目瀬川は、宝暦年間(1751~1764年)に活躍した吉原を代表する花魁です。
下総国(現在の千葉県北部)の農家に生まれ、その美貌と多才さで知られていました。
三味線、舞踊、茶道、和歌など、多岐にわたる芸事に精通し、その教養の高さは群を抜いてと言われています。
彼女の文才は特に高く評価され、親友である雛鶴への手紙は、深い友情と優れた文章力を示すものとして伝えられています。
その後、豪商の江市屋宗助によって高額な身請けが行われ、両国近辺で暮らしましたが、30歳を迎える前に早逝したとされています。
五代目 瀬川
五代目瀬川は、四代目の後を継いで「瀬川」の名跡を受け継いだ花魁で、通称「花の井」として知られています。
五代目瀬川は、幼少期に親に捨てられ、吉原の老舗妓楼「松葉屋」に引き取られ、高度な教育を受け多岐にわたる芸事や教養を身につけ早くから注目を集めたと言われています。
彼女の前半生についての詳細な記録は残っていませんが、安永4年(1775年)に五代目瀬川を襲名し、吉原を代表する花魁として名を馳せました。
その才能と美貌が認められ、江戸中に知れ渡り、多くの客が彼女に会うために吉原を訪れました。
彼女の魅力は外見だけでなく、知性や教養、そして人柄にもあり、多くの文人や芸術家とも交流を持ちました。
高額な身請けとその後の波乱
1775年(安永4年)、盲目の高利貸しである鳥山検校によって、五代目瀬川は1,400両(現在の価値で約1億8,000万円)という高額で身請けされました。
この出来事は当時の江戸で大きな話題となり、彼女の名声をさらに高めました。
しかし、鳥山検校は悪徳高利貸しとして知られており、1778年(安永7年)、幕府によって全財産を没収され、江戸から追放されると彼女の生活も一変します。
その後、彼女がどのような人生を歩んだのかは明確な記録がなく、武士や大工の妻になったという説もありますが、詳細は不明です。
五代目瀬川の波乱に満ちた生涯は、戯作者・田螺金魚によって洒落本『契情買虎之巻』の題材となりました。
この作品は、彼女と鳥山検校との関係や、その後の出来事を描いており、当時の読者から高い人気を集めました。
この作品は「人情本の祖」とも呼ばれ、江戸時代の文学に大きな影響を与えました。
大河ドラマ『べらぼう』での描かれ方
2025年放送の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』では、五代目瀬川が「花の井」という名で登場します。
演じるのは小芝風花さんで、主人公・蔦屋重三郎(横浜流星さん)の幼なじみとして描かれています。
幼少期に吉原で育ち、共に過ごした二人の関係性や、吉原の再興に尽力する姿が描かれています。
花の井は、蔦重が地本問屋の参入への手助けとして「五代目瀬川」を襲名を決意します。
蔦重が「瀬川の名前は不吉なのに背負っていいのか」と心配するも、「わっちが豪儀な身請けでも決めて、瀬川をもう一度幸運の名跡にすればいいだけの話さ」と言います。
「男前だな、おめえ」と感謝する蔦重。
蔦重を救おうとする花の井の真摯な愛が際立ち、切なさが募る場面でありました。
まとめ
五代目瀬川は、江戸時代の吉原でその美貌と才能、そして波乱に満ちた生涯で多くの人々を魅了しました。
彼女の人生は文学作品の題材となり、現代でも大河ドラマで取り上げられるなど、その影響は計り知れません。
彼女の生涯を通じて、江戸時代の文化や社会背景、そして人々の価値観を垣間見ることができます。
大河ドラマ『べらぼう』を通じて、五代目瀬川の魅力とその時代の雰囲気をぜひ感じてみてくださいね。
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