私たちが当たり前のように使っている「90度の直角」、もしこれが100度だったらどうなっていたのでしょうか?
実はこの90度には、4000年以上前から続く文明の知恵と数学的な美しさが詰まっています。
角度はなぜこの数になったのか、どうして360度という体系が生まれたのか、今回は身近すぎて考えたこともない「角度の歴史」について紹介します。
なぜ、1周=360度なのか?
角度の基準は、古代バビロニア文明まで遡ります。
バビロニア人は、私たちが60分・60秒で時間を数えるのと同じように、六十進法(60を基準にする数の体系)を使っていました。
この六十進法が、後の角度の概念にも大きく影響を与え、円を表す数として「360」が選ばれたと考えられています。
360が選ばれた理由には、もうひとつ有力な説があり、それが「1年=約360日」説です。
当時の天文学では、太陽が空を一周する周期が約360日と考えられていました。
太陽の軌道=円運動と見なし、その動きを角度と結びつけた結果、円周が360度と決まったというわけです。
現代では、どちらか一方が正解というよりも、六十進法文化と天文学的観測が組み合わさって360度体系が誕生したと考えられています。
理由は圧倒的に便利だから
360という数字には、偶然ではない特別な性質があります。
その特徴は、「約数の数がとても多い=高度合成数」であることです。
360は1から10のうち、7を除くすべての数で割ることができるため、円を分割したり角度を計算したりするうえで、圧倒的なメリットになります。
円を3等分 → 120度、円を4等分 → 90度、円を5等分 → 72度、円を6等分 → 60度、すべてきれいな整数で表せるため、当時の天文学者も数学者も計算がとても楽でした。
もし円周が、100度や400度だったらこうはいきません。
割りやすさという数学的合理性が、360度という体系を世界中に浸透させた最大の理由なのです。
直角が90度のまま普及した理由
1周=360度と決まれば、その4分の1である直角は当然「90°」になります。
しかしこの90度には、もうひとつ大きな魅力があります。
それは、『基本的な図形の角度がすべて整数で表せる』という点です。
たとえば、「正三角形:60度「、「正方形:90度」、「正五角形:108度」、「正六角形:120度」どれもきれいな整数です。
これが直角を「100度」にしてしまうと、三角形の内角の和は180度ではなく200度になり、正三角形の一角は66.666…度と割り切れません。
三角定規の角度も小数になり、教育現場や設計現場で扱いづらい世界になってしまいます。
つまり、90度体系は数学的に最も美しく、最も扱いやすい角度体系だったため、世界の標準として残ったわけです。
まとめ
私たちが当たり前に使っている90度の直角には、実は4000年以上前から受け継がれた歴史と数学の知恵が詰まっています。
1周を360度とした古代バビロニアの体系が、約数の多さと扱いやすさから長く受け継がれ、現代でも理にかなう形として残りました。
90度は偶然ではなく、文明と数学が選び抜いたもっとも美しい直角だったのですね。
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