巨大なタラバガニ、海の幸を詰め込んだ豪華弁当、そして白い恋人やルタオなど北海道の名ブランドが並ぶ、全国の百貨店で開催される「北海道物産展」は、まさに集客の王様です。
開催すれば人が集まり、売り場は熱気に包まれますが、意外にもあれほど人気のこのイベント、実はほとんど利益が出ていないのです。
それでも各百貨店が毎年のように開催を続けるのはなぜなのでしょうか…?
実は赤字?それでもやめられない理由
物産展の会場を訪れると、最初に目を引くのは「限定」や「初登場」と書かれたポップです。
人気ラーメン店のブースや海鮮ブースに行列ができ、スイーツコーナーでは、1日〇〇個限定という希少性がさらに購買意欲をかき立てます。
こうした限定・初登場・数量限定は、現代の消費心理を突いた鉄板の戦略、ここでしか買えないという感情が物産展の魅力を支えています。
実際、会場を歩く人々の多くは「SNSで見て気になった」「スイーツが食べたいから来た」と語り、情報拡散と購買行動が密接につながっていることがわかります。
これほど盛況であれば、当然儲かっていると思いがちですが、実際はそうではありません。
北海道から本州各地へ海産物を運ぶには莫大な輸送費がかかり、冷凍・冷蔵設備の確保や電気代も大きな負担になります。
また、会場設営やスタッフの人件費も高く、単体では赤字に近いイベントといわれています。
それでも百貨店が年に何度も開催するのは、波及効果が圧倒的だからです。
物産展を目的に訪れた人が、ついでにブランドショップや食料品売り場に立ち寄ることで百貨店全体の売上が伸びる傾向があり、イベントそのものがお客様を呼ぶ巨大広告の役割を果たしているのです。
つまり、北海道物産展は単体で利益を出すためではなく、百貨店全体の売上を底上げするために存在しているのです。
北海道物産展は、百貨店にとって利益を度外視してでも開催する価値ある看板イベントとなっています。
90年続く北海道ブランドの力
北海道物産展の歴史は古く、昭和初期にはすでに開催されていた記録があります。
当時は冷凍技術が発達しておらず、扱われていたのは新巻鮭や燻製、魚卵の加工品など、それでも都市部の人々にとって北の大地の恵みは特別な価値を持っていました。
現代においてもその構図は変わっておらず、都市生活者にとって非日常のご褒美、だからこそ人々は物産展に並び財布の紐を緩めるのです。
こうしたブランドの記憶と食の感動が結びつくことで、北海道物産展は単なる販売会ではなく文化的なイベントへと進化しました。
利益を超えた価値、それこそが90年以上にわたってこの催しが続いてきた理由なのです。
まとめ
北海道物産展が、高い経費をかけても開催が続くのは、そこで得られる信頼・話題・購買連鎖が、百貨店全体を支えるからです。
そして、その根底にあるのは「北海道=特別」という不変のブランドイメージ、誰もが一度は惹かれる北の味覚、それは時代が変わってもなお、私たちの心を動かす最強のキーワードなのですね。
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