2013年に登場した「いきなり!ステーキ」は、立ち食いステーキという斬新なスタイルで一気に注目を集め、数年のうちに日本中へ広がる社会現象級のブランドとなりました。
しかし、成功の裏側には無理な拡大による歪みがあり、数年後には大量閉店によって凋落の象徴のように語られる存在になりますが、2024年ついに黒字化を達成し静かに復活の気配を見せています。
常識を覆して大成功
いきなりステーキが支持された理由は非常にシンプルで、「ステーキ=特別な料理」という常識を壊し、日常の一人ステーキという新しい市場を作ったことにあります。
立ち食いによる回転率の向上、原価率70%超の高品質な肉を低価格で提供する価格戦略は、当時としては画期的でした。
さらに顧客の熱を高めたのが「肉マイレージ制度」です。
食べたグラム数がそのままステータスとなり、ランクアップすると特典がもらえる仕組みで多くのファンを拡大させました。
ロカボブームと重なったことも追い風で、糖質制限中の男性客を中心に多くの常連客が誕生、いきなりステーキは誰も想像していなかった市場の創造に成功し、一気に成長を加速させていきます。
過剰出店と制度改悪がもたらした崩壊
2013年からわずか6年で全国500店舗近くまで増加し、近隣店舗同士が顧客を奪い合う状態になりました。
急拡大に社員教育が追いつかず、肉の質や接客にもばらつきが生まれ、ブランドへの信頼が揺らぎ始めます。
そして致命傷となったのが「肉マイレージ制度の改悪」です。
食べた量でステータスが決まっていた仕組みが、突然「来店回数」に変更され、積み上げてきた実績が無意味になり一部ユーザーは離脱、SNSでも批判が相次ぎファンの熱は急速に冷めてしまいます。
さらに、値上げも続きリピーターの満足度は低下、主力だった「ペッパーランチ事業」まで売却するほど業績は悪化し、いきなりステーキは完全に失速してしまいました。
大量閉店から始まった再生
転落期を経て、いきなりステーキは体制の立て直しに踏み切ります。
第一歩となったのは、不採算店を徹底的に閉鎖することで、2019年の約500店舗から2025年には175店舗まで縮小し、無理のない規模へと再編されました。
この選択と集中によって、ブランドはようやく本来の身軽さを取り戻します。
さらに、2024年からは券売機やセルフレジを導入し店内オペレーションの負担を大きく軽減、人件費の削減や効率化が進み店舗の収益性が改善していきました。
その結果、2024年12月期にはペッパーフードサービス全体で黒字化を達成、いきなりステーキ単体では12.8億円の営業利益を叩き出すまでに回復しています。
売上は店舗数減少で微減しているものの、利益は大幅に増加しており経営の質が明確に変わったことがわかります。
また、2024年には肉マイレージ制度を改善し、会計額100円ごとにポイントが付与される仕組みへと変更、初期の「食べた量でランクが上がる面白さ」が復活し、常連客の満足度が再び高まっています。
店舗によっては客単価が上昇し、熱心なファンがブランドを支える構造が戻りつつあり、かつての国民的ブームではなく、いまは濃いファンが支える専門ブランドへと進化しているのが、現在のいきなりステーキの姿になっています。
まとめ
いきなりステーキは、急拡大の失敗を経て、ようやく復活のフェーズに入りました。
DX化の推進や制度の見直し、ターゲット層の明確化によって、ブランドは再び強さを取り戻し始めています。
今後も競合は多く油断はできませんが、日常のステーキ文化を磨き続ける限り、第二の黄金期が訪れる可能性は十分にあります。
静かな黒字化は、いきなりステーキにとって再生の第一歩にすぎないのです。
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