人間の生命の神秘は、時に医学の常識を超えて現実となります。
世界で最も多くの子どもを産んだ女性というテーマは、どこか都市伝説のようにも聞こえますが、実際にギネス世界記録に正式に認定されている驚くべき記録が存在します。
現代医学の進歩によって奇跡を起こした女性と、数百年前のロシアで人類史上最多とされる出産記録を残した女性、どちらも想像を絶する数字ですが、そこには話題性を超えた母の強さと命の奇跡がありました。
9人を一度に出産したハリマ・シセさん
2021年5月、世界を驚かせるニュースが流れました。
アフリカ・マリ共和国出身のハリマ・シセさんが、一度の出産で9人(五女四男)の赤ちゃんを出産したのです。
この出産はギネス世界記録に正式認定され、医学的にも奇跡的なケースとして注目されました。
当時25歳だったシセさんは、妊娠初期の検査で最初は7人と診断されましたが、出産時には9人が確認され医師団も驚きを隠せなかったといいます。
問題は、マリ国内には9人を同時に安全に取り上げられる設備がなかったことです。
そこで政府の支援を受け、約6,000km離れたモロッコ・カサブランカの病院へと緊急搬送されました。
長距離移動も母子にとって大きなリスクでしたが、シセさんは帝王切開で全員を無事に出産、9人の赤ちゃんの体重は500g〜1kg前後と非常に小さく、出産直後は集中治療室で医療チームが24時間体制で母子を支え、数か月後には全員が退院できました。
2023年には全員が2歳の誕生日を迎え、現在も健康に成長しています。
このニュースは「命の奇跡」として世界中で報じられました。
彼女の母国マリでは国を挙げて祝福ムードとなり、シセさん自身も「神様が授けてくれた贈り物」と語っています。
医学的にもこのような多胎出産が母子ともに生存する例は極めてまれであり、まさに現代医療と母の強さが生んだ奇跡と言えるでしょう。
69人を産んだヴァシリエフ夫人
もうひとつの驚異的な記録は、18世紀のロシアで記録されたものです。
人類史上最も多くの子どもを産んだとされているのは、ロシア・シュヤ地方の農民フェオドール・ヴァシリエフ氏の妻、彼女は1725年から1765年の40年間で、合計69人の子どもを出産したと記録されています。
ギネス世界記録にも登録されており、双子16組(32人)三つ子7組(21人)四つ子4組(16人)合計27回の出産を経て、69人を生んだとされています。
ただし18世紀の記録であるため、現代のような医療データの裏付けはなく、研究者の間では誇張や伝聞の可能性もあるとの見方もあります。
それでも当時の資料が複数の国で一致していることから、完全な作り話とは言い切れません。
もしこの記録が事実であれば、40年間のうち約18年間は常に妊娠状態だった計算になります。
現在のような医療支援や栄養管理がなかった時代に、これほど多くの子どもを生んだというのは驚異的であり、人類の歴史の中でも特筆すべき出来事といえるでしょう。
まとめ
マリのハリマ・シセさんの9人同時出産は、現代医療の限界を超えた命の奇跡、ロシアのヴァシリエフ夫人による69人出産は、歴史の中に刻まれた母性の象徴です。
どちらの記録も単なる数字ではなく、人間の根源的な力を示しています。
母は強しという言葉は、まさにこの二人のためにあるのかもしれませんね。
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