私たちが毎日のように使っている便利な日用品、その中にはもともと軍事目的で開発されたものが意外なほど多いのをご存じでしょうか?
戦争という極限の状況で培われた技術が、やがて平和な時代の暮らしを支える存在へと姿を変えています。
今回は、そんな軍事発祥の日用品の中から2つを紹介します。
ティッシュ
ティッシュペーパーのルーツは、第一次世界大戦中にアメリカのキンバリー=クラーク社が開発したセルローズ素材のガスマスク用フィルターでした。
戦場で兵士の命を守るために作られたこの素材は、終戦とともに大量に余ったことで、同社の研究者が「この柔らかい紙、化粧落としに使えるのでは?」と再利用を思いつき、1924年に「クリネックス」として民間販売が始まりました。
その後、風邪をひいた人が鼻をかむ用途で使い始めたことから、現在のティッシュ文化が定着します。
また、ポケットティッシュは日本発祥で1969年に十條キンバリー(現・日本製紙クレシア)が開発、銀行などが広告入りで配布したことから一気に広まりました。
つまりティッシュは、戦場の防具から生まれた清潔の象徴なのです。
缶詰
私たちの非常食としてもおなじみの「缶詰」、その起源は18世紀末のフランス革命期にまで遡ります。
当時、遠征続きだったナポレオン・ボナパルトが「軍隊のために長期保存できる食料を開発した者に賞金を与える」と公募を出しました。
これに応じたのがニコラ・アペールという職人で、1809年に瓶詰めによる真空保存法を発明、これがのちに缶詰技術へと発展していきます。
1810年には、イギリスのピーター・デュランドがブリキ缶による保存食を特許化し世界中に広まりました。
ただし、当時は缶切りが存在せず、兵士たちはナイフや銃剣でこじ開けて食べていたといわれます。
缶切りが発明されたのは約50年後の1855年、この保存技術は戦場での食料供給を変え、のちに民間の食文化を豊かにしたのです。
まとめ
戦争の技術と聞くと、どうしても破壊のイメージが強いものです。
しかし、ティッシュも缶詰ももとは命を守るため、効率を高めるために開発された技術でした。
それが戦後、民間に転用され人々の生活を便利にし、今やなくてはならない存在になっています。
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