クロールなら速さ、平泳ぎなら正確さ、背泳ぎは安定性と呼吸の自由、では、バタフライは何を目的とした泳ぎなのでしょうか。
実はこの泳法、最初から独立した競技として生まれたのではなく、平泳ぎを速く泳ぐためのズルから生まれたものでした。
そして、その偶然の進化こそが、オリンピックが追い求める人間の限界への挑戦を象徴しているのです。
バタフライは平泳ぎのズルから生まれた
バタフライの起源は、1920〜1930年代に行われていた平泳ぎの競技にさかのぼります。
当時、選手たちはどうすればより速く泳げるかを研究し続けていました。
そんな中である選手が、「両腕を前方に戻すとき、水面の上から回した方が速い」と気づいたのです。
当時のルールでは「両腕を同時に動かすこと」しか定められていなかったため、これは反則ではありませんでした。
しかし水面を勢いよく羽ばたくようなフォームは目立ち、その姿が蝶のように見えたことから「バタフライ」と呼ばれるようになります。
当初はまだ足の動きは平泳ぎと同じカエル足でしたが、1930年代後半、アメリカの選手たちが「上下に波打つように動かした方が速い」と発見、それが現在も使われているドルフィンキックです。
この新しいキックと組み合わせることで、バタフライは平泳ぎとは全く異なる泳ぎとなり、1952年に国際水泳連盟によって正式に独立した泳法として認定されました。
つまり、もともとは速さを求めた工夫から生まれた偶然の進化が、のちに独自の美しさと技術性を持つ泳法として確立されたのです。
バタフライが象徴する力と芸術
バタフライは最もパワーと技術の両方を要求する泳ぎです。
腕の振り、キック、そして呼吸のタイミング、これらが少しでもずれると、たちまちバランスを崩して沈んでしまいます。
全身を連動させ、水の抵抗を最小限に抑えながら進むには、筋力だけでなくリズム感と繊細な感覚が不可欠です。
まさに、身体全体の協調性を極限まで高めた泳法といえます。
また、その動きは見る者を魅了、水しぶきを上げながらまるで水面を舞うように進む姿は芸術とも呼ばれます。
他の泳法が、効率や正確さを重視するのに対し、バタフライは力と美の調和を体現する存在なのです。
オリンピックでこの種目が特に注目されるのは、単に速さを競うだけではなく、人間が水中でどれだけ優雅にそして力強く動けるかを示す象徴だからでしょう。
まとめ
バタフライは、もともと平泳ぎを速くするための試行錯誤から生まれた偶然の産物でした。
そこにイルカのような動きを取り入れたことで、やがて独立した種目となり人間の筋力とリズム、そして身体の調和を極める競技へと進化しました。
バタフライとは、スポーツが単なる競争を超え、芸術や哲学にまで踏み込んだ人間の表現の極致なのです。
あわせて読みたい|マタイク(mataiku)