今回は、太陽系最大の惑星「木星」に突入した探査機ガリレオの冒険について紹介します。
映画やアニメでしか見たことのないような壮大な宇宙ミッションの裏側、気になりませんか?
実はガリレオ探査機は、宇宙科学における革命的な発見を次々ともたらした存在なんです。
木星へ挑む「探査機ガリレオ」の壮大なミッション
ガリレオが目指した木星について少し紹介しましょう。
木星は太陽系で最も大きな惑星で、質量は地球の約318倍、直径は約14万キロメートルもあります。
この巨大さ、地球と比べるとまるでピンポン玉とバスケットボールの差のようです。
また、自転速度が非常に速く、わずか10時間で一周するため、赤道付近が膨らんだ独特の形をしています。
さらに木星は強力な磁気圏を持ち、地球の約2万倍の力を誇り、その範囲は木星の半径の75倍にも及びます。
この磁気圏の中には、強力な放射線帯が存在し、地球上のどの生物も耐えられない環境です。
それでも私たちを惹きつける木星の魅力は何なのでしょうか?
探査機ガリレオの誕生秘話
ガリレオは、1989年10月18日にスペースシャトル・アトランティスによって打ち上げられました。
しかし、打ち上げまでの道のりは簡単ではありませんでした。
当時、チャレンジャー号の事故が起きたため、計画が大幅に変更されることになります。
液体燃料ロケットの使用が中止され、安全性が高い個体燃料ロケットに切り替えられたのです。
この変更により、ガリレオは直接木星に向かうことができなくなりました。
しかし、科学者たちは斬新な方法を考えつきます。
それが「スイングバイ」技術です。
この技術を使って金星と地球の重力を利用しながらエネルギーを得て、最終的に木星への旅を可能にしました。
壮大な旅路と挑戦
ガリレオの旅は約6年にわたりました。
まず金星を経由し、次に地球を2回通過することでスピードを上げていき、途中、火星の軌道を超えて地球に戻るという、まるでブーメランのような起動を描きました。
これらすべてが木星に到達するための緻密な計算の成果だったのです。
1995年、ついにガリレオは木星に到着しました。
その後は、オービターと呼ばれる木星の周回観測機とプローブ(探査機本体)の2つのパートに分かれ、それぞれが重要な役割を果たします。
プローブは秒速47.4kmという驚異的なスピードで木星の大気に突入。
温度は太陽の表面温度を超える約1万5000℃に達し、炭素フェノール製の熱シールドを装備していたものの、突入中にその2/3が溶け落ちました。
この過酷な環境を耐え抜きながら、プローブはデータを地球に送り届けるという大きな使命を果たしたのです。
液体金属水素層や内部構造、そして秒速100メートルを超える暴風が吹き荒れる環境など、木星の秘密を次々に解明。
また、57分間という短い時間ながらも、極限環境でデータを送り続けたプローブの頑張りには感動を覚えます。
一方、オービターは木星の衛星や磁気圏を詳細に観測しました。
主要な衛星であるエウロパ、ガニメデ、カリスト、そして火山活動が活発なイオに接近し、それぞれの地質や表面の特徴を詳細に観測。
エウロパの氷に覆われた表面下には海が存在する可能性が示唆され、生命の存在が議論されるきっかけにもなりました。
また、シューメーカー・レビー第9彗星が木星に衝突する様子を観測した映像は、科学界を驚かせる成果でした。
この出来事は、木星が太陽系内の衝突から地球を守る「盾」としての役割を担っていることを裏付けるものでした。
木星の強力な重力が小惑星や彗星を引き寄せ、その多くを吸収しているのです。
もし木星がなかったら、これらの天体が地球に衝突する可能性が高かったと言われています。
たとえば、2009年に木星に衝突した巨大な天体の痕跡は長さ8000キロメートルにも及びました。
これが地球に落ちていたら、地球の半分以上の地域に影響を及ぼしたかもしれません。
壮大なフィナーレ
ガリレオは約8年にわたる科学探査を続けました。
2002年には最後の大仕事として、木星の小衛星アマルテアを観測。
この後、ガリレオは燃料の枯渇が迫る中、木星の軌道を回り続けました。
しかし、NASAはガリレオを放置するのではなく、木星に計画的に突入させる「抹殺」という結論を下しました。
これは、探査機が地球由来の病原体を木星の衛星エウロパに持ち込むリスクを回避するためです。
エウロパには海が広がっている可能性が高く、その環境が汚染されることを防ぐために、NASAはガリレオを安全に処理する必要があったのです。
2003年9月21日、ガリレオは軌道修正によって木星の大気に突入し、その役目を終えました。
この瞬間は、数多くの困難を乗り越えた探査機が宇宙探査の歴史に新たな1ページを刻んだのです。
まとめ
探査機ガリレオのミッションは、木星の神秘を解き明かすだけでなく、私たちの地球がどれだけ奇跡的な環境に恵まれているかを教えてくれました。
壮大な宇宙の中で、地球という奇跡の星に生きていることに感謝せずにはいられません。
これからも、宇宙探査は私たちに新たな発見と感動をもたらしてくれることでしょう。
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