「日韓トンネル」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
40年以上前に壮大な構想として発表された「日韓トンネル」は、佐賀県の唐津市から壱岐・対馬を経て韓国の釜山を結ぶ、総延長距離は約270km、海底距離は約150kmの海底トンネルです。
しかし、いまだに工事が始まらないこのプロジェクト、一体なぜ実現しないのか…。
今回は、日韓トンネルが抱える4つの大きな壁について紹介します。
日韓トンネルが建設されない4つの理由
莫大な建設費用
日韓トンネルの建設には、10兆円規模の費用がかかると試算されています。
この金額は日本の国家予算の一部に匹敵するほどの規模であり、プロジェクトを進めるには両国の政府と民間企業の協力が不可欠です。
しかし、この膨大なコストに見合うだけの経済的メリットが十分に示されていないことが、最大の課題となっています。
さらに、トンネルの完成後も維持管理に多額の費用がかかります。
海底トンネルは定期的なメンテナンスが欠かせず、地震や津波などの自然災害に対する安全対策も必要です。
これらのコストを考えると、政府や投資家にとってプロジェクトを進めるリスクが非常に高いのです。
地形的・地質的課題
日本と韓国を隔てる対馬海峡や津軽海峡は、地形的にも地質的にも複雑な条件が重なっています。
例えば、海底の最深部は200メートルを超える場所もあり、長距離にわたる掘削作業には最先端の技術が求められます。
また、この地域は地震や火山活動が活発な環太平洋火山帯に位置しています。
地震による揺れや断層のずれ、さらには津波などのリスクが常に存在しており、これらの自然災害に対応したトンネル設計が必要です。
これらの安全対策を講じるには、さらに多くの時間とコストがかかるため、実現が遠のいているのが現状です。
政治的・歴史的な背景
日韓トンネル構想が進まないもう一つの大きな理由は、両国間の政治的・歴史的な問題です。
日本が韓国を植民地支配していた歴史や、竹島(独島)をめぐる領土問題など、両国間には多くの解決すべき課題があります。
韓国側では、「日本が経済的支配を強めるためのプロジェクトではないか」という懸念が根強く、一部ではトンネル建設が再び植民地支配の象徴となるのではないかという批判もあります。
また、トンネル建設には両国政府の協力が必要ですが、これまでの外交関係の中でプロジェクトを前進させるための十分な信頼関係が築かれていないことも障壁となっています。
国民感情の溝も大きく、政治的な合意を形成するのが難しいのが現実です。
飛行機の方がコスパが良い
現代の移動手段として、飛行機は非常に効率的でコストパフォーマンスが高い方法です。
LCC(格安航空会社)の普及により、日本と韓国間のフライトは片道1万円以下で利用できることも珍しくありません。
また、所要時間は1〜2時間程度と非常に短く、利便性の面でトンネルと比較して優位性があります。
仮に日韓トンネルが完成しても、長距離を車や列車で移動するコストや時間が飛行機に劣る可能性があります。
これに加えて、貨物輸送についても既存の海運や航空輸送が整備されているため、トンネルの利用需要がどれほどあるのかは不透明です。
まとめ
日韓トンネルは、壮大な構想ではありますが、これらの問題を解決しない限りトンネルが実現する可能性は低いでしょう。
しかし、このプロジェクトが両国の経済や文化交流をさらに深める可能性を秘めていることも事実です。
将来的に技術が進歩し、両国間の信頼関係が深まれば、日韓トンネルが新しい時代の象徴として実現する日が来るかもしれません。
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