「マイル」と聞くと、飛行機のマイレージや海外の距離表示を思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし、同じ「マイル」という単位が、陸と海で異なる長さを持つことをご存知でしょうか?
実は、陸上のマイルと海上のマイル(海里)は、その起源や用途により異なる距離を表しています。
今回は、その違いや背景、そしてなぜ統一されていないのか?を紹介します。
陸上のマイルと海上のマイルの違い
まず、陸上で使用されるマイル(法定マイル)と、海上で使用されるマイル(海里)の違いを見てみましょう。
- 陸上のマイル(Statute Mile)|約1,609.344メートル
- 海上のマイル(海里、Nautical Mile)|1,852メートル
このように、海里の方が約243メートル長くなっています。
では、なぜ同じ「マイル」という名称でありながら、これほどの差が生じたのでしょうか。
「マイル」という単位は、古代ローマ時代に遡ります。
ラテン語の「mille passus(千の歩)」が語源で、ローマ軍が1,000歩進む距離を1マイルと定義していました。
この距離は「約1,480メートル」とされています。
その後、イギリスで1マイルは1,760ヤード(5,280フィート)と定められ、これが現在の約1,609.344メートルのマイルの基準となったのです。
一方、海上での距離測定には、地球の大きさや形状を考慮した別の基準が必要とされました。
海里は、地球の子午線(経度線)に基づいて定義されています。
地球の子午線の全周を360度とし、1度を60分に分けたときの1分(1/21,600)の長さが約1,852メートルとなります。
これが1海里の基準です。
この定義により、緯度・経度を用いた航海や航空での位置測定が容易になりました。
日本人に馴染みがないマイルへの疑問
まず始めに、ヤードポンド法とは、インチ(1インチ約2,5㎝)、フィート(1フィート約30㎝)、ヤード(1ヤード約90㎝)、マイル(1マイル約1.61㎞)となります。
現在、ヤードポンド法を使って国は、 アメリカ、ミャンマー、リベリアの3カ国です。
私たち日本人には馴染みがない「マイル」ですが、このようなことを知ってもいくつかの疑問が出てくるのではないでしょうか。
陸上と海上で。なぜ同じ「マイル」という名称を使用するのか?
陸上のマイルと海上の海里は、異なる起源と用途を持ちながら、共に「マイル」という名称を使用します。
これは、歴史的な経緯と慣習によるものです。
陸上のマイルが広く普及した後、海上での距離単位として海里が導入されましたが、全く新しい名称を作るよりも、既存の「マイル」という名称を用いる方が受け入れやすかったのです。
陸上のマイルと海上の海里が統一されていない理由は、主に以下の点にあります。
- 用途の違い
陸上では人間の活動や交通に基づいた距離測定が主であり、海上や航空では地球規模での位置測定が求められるため、それぞれの用途に適した単位が必要とされた。 - 歴史的背景
陸上のマイルは古代から使用されており、海里は後に航海の必要性から導入された為、既に定着した単位を変更することは困難だった。 - 実用性
海里は緯度・経度と直接関連しているため、航海や航空での位置測定や航路計画において非常に便利、一方で陸上のマイルは日常生活や陸上交通での距離測定に適している。
これらの理由から、陸上のマイルと海上の海里は現在も別々の単位として使用されています。
なぜマイルは日本に浸透しなかったのか?
日本は1885年にメートル法を正式採用し、すべての公式な距離単位がメートル法で統一されました。
そのため、マイルが普及する余地がなかったのです。
かつて日本では「尺・間・里」などの独自の距離単位がありましたが、歴史的に見ても、日本ではキロメートルへの移行がスムーズに行われました。
また、日本の鉄道や高速道路の距離表記は「km」で統一されており、人々がマイルを使う必要がありませんでした。
船乗りやパイロットは「海里」や「ノット」を使うが、日本の一般市民がマイルを意識することはほぼない為、一般的に馴染みがない単位となっています。
このような経緯で、マイルの単位が日本で浸透することなく今に至っています。
まとめ
「マイル」という同じ名称を持つ単位でも、陸上と海上で異なる距離を表しています。
これは、それぞれの歴史的背景や用途、測定基準の違いによるものです。
日常生活ではあまり意識することは少ないかもしれませんが、知っておくと話のネタになるかもしれませんね。
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