日本ではなぜ土葬ではなく火葬が一般的なの?これは意外と知られていない疑問のひとつです。
海外、特にアメリカやヨーロッパでは土葬が多い一方で、日本ではほぼ100%が火葬。
いったい何が違うのでしょうか?
この理由を知ると、「なるほど、納得!」と感じること間違いなしですよ。
今回は、日本で火葬が当たり前になった背景や、土葬が廃れた決定的な理由を紹介します。
日本が火葬を選んだワケ
仏教の教えが火葬を根付かせた
まず、日本で火葬が普及した背景には宗教的な影響が大きく関係しています。
日本に広まった仏教の多くの宗派では、「死後、肉体は滅びるが魂は輪廻転生する」と考えられています。
そのため、遺体そのものに特別な意味を持たせる土葬よりも、「浄化のために焼く=火葬」のほうが馴染みやすかったのです。
特に奈良時代(8世紀)以降、貴族や僧侶を中心に火葬が広がり、やがて庶民にも定着していきました。
これはインドや中国など仏教圏の国々にも見られる傾向で、仏教と火葬の結びつきは世界的にも強いのです。
土葬が不衛生だった?疫病対策としての火葬
昔の日本では、土葬の遺体が地下水を汚染し、疫病を引き起こすというリスクがありました。
特に江戸時代にはコレラや天然痘、ペストといった伝染病が頻発しており、当時の医療技術では感染拡大を防ぐ手立てがほとんどありませんでした。
土葬では、適切に管理しないと腐敗が進み、悪臭や害虫の発生源にもなってしまうのです。
一方、火葬は遺体を高温で焼却するため、病原菌を完全に消滅させることができ、衛生的な面で圧倒的に優れていました。
疫病の拡大を防ぐために、火葬が推奨されたのは自然な流れだったと言えるでしょう。
日本は土地が狭い!土葬では墓地不足が深刻化
日本は国土の約7割が山地で、可住地が限られています。
人口密度の高い都市部では、広大な墓地を確保するのが難しく、土葬を続けていくと墓地不足が深刻化してしまいます。
例えば、アメリカやヨーロッパでは広大な土地を確保しやすいため、土葬の文化が根付いたのですが、日本ではそうはいきません。
1人1人のためにスペースを取るのではなく、骨壺に納めて家族の墓にまとめて入れるほうが圧倒的に合理的だったのです。
また、日本の都市部では納骨堂や樹木葬などの新しい埋葬スタイルも増えており、スペースの問題に対応した火葬後の供養方法が主流になっています。
明治政府の決断が火葬を当たり前にした
日本で本格的に火葬が普及したのは、明治時代に入ってからです。
1873年、政府は「土葬を禁止し、火葬を推奨する」という方針を打ち出しました。
これは、近代化政策の一環として衛生面の向上と都市部の墓地不足解消を目的にしたものです。
一時的に土葬禁止令は撤回されたものの、その後も政府は火葬の方が現代社会に適しているという考えのもと、火葬の推進を続けました。
そして、時代とともに火葬が一般化し、戦後にはほぼ100%の遺体が火葬される社会へと変わったのです。
現代の日本における火葬事情
現代の日本では、火葬は法律でほぼ義務化されており、「墓地、埋葬等に関する法律」によって、埋葬または火葬が必要と定められています。
その結果、日本では火葬率99.97%(厚生労働省 2021年データ)という圧倒的な数字となっており、ほぼ全員が火葬を選択しています。
都市部では、さらに納骨堂や樹木葬、散骨など、従来のお墓とは異なる供養のスタイルも広がっています。
お墓を持たずに、海や山に遺灰をまく「自然葬」も注目されており、時代とともに供養の形も多様化しているのです。
また、近年は火葬場の不足という問題も出てきています。
特に人口の多い都市部では、火葬場の予約がなかなか取れないケースもあり、火葬待ちの期間が長くなることもあります。
このように、日本の火葬文化は今後も変化していく可能性があり、さらなる対策が求められています。
まとめ
日本で火葬が主流になった理由には、仏教の影響、衛生上の問題、土地不足、そして明治政府の政策が深く関係しています。
火葬は衛生的かつ合理的な選択肢であり、日本の環境に適していたため、結果として定着しました。
今後も火葬の需要は続くが、火葬場の不足などの新たな課題も生じており、日本の葬送文化は変化を続けていくことになるでしょう。
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