毎朝の通勤・通学中、電車やバスでついウトウトしてしまうことはありませんか?
「昨夜はちゃんと寝たのに、なぜこんなに眠いのか?」と疑問に思ったことがある人も多いでしょう。
実は、これは単なる疲れや寝不足だけが原因ではなく、脳の働きや生理学的な要因が大きく関係しているのです。
ここでは、なぜ移動中に眠くなってしまうのか、紹介していきます。
電車やバスで寝落ちしてしまう理由とは
電車やバスの「ゆらぎ」が眠気を誘う
電車やバスの揺れには「1/fゆらぎ(エフぶんのいちゆらぎ)」と呼ばれるリズムが含まれています。
この1/fゆらぎとは、波の音や木の葉が揺れる音、小川のせせらぎのような、規則的でありながらもランダムな変化を持つリズムのことを指します。
このリズムは、心拍や呼吸のリズムと近いため、人間にとって心地よく感じられ、リラックス効果をもたらし、その結果、副交感神経が優位になり、体が「休息モード」に入ることで、眠気を感じやすくなるのです。
電車のガタンゴトンというリズムや、バスの適度な振動が、まるで「ゆりかご」のような働きをし、無意識のうちに私たちを眠りへと誘います。
脳が「刺激を遮断」することで眠くなる
人間の脳は、一定の刺激が繰り返されると、その刺激に対する反応を徐々に鈍くする仕組みを持っています。
これは「馴化(じゅんか)」と呼ばれる現象で、例えば、時計の秒針の音や冷蔵庫の低いブーンという音など、最初は気になっていたものが、次第に意識に上がらなくなるのと同じメカニズムです。
電車やバスに乗っていると、窓の外の景色や車内の音、振動などが一定のリズムで繰り返されます。
こうした単調な環境にさらされ続けると、脳は「これは重要な情報ではない」と判断し認識しなくなっていきます。
その結果、脳の覚醒レベルが低下し、自然と眠気が訪れるのです。
特に、朝の通勤時はまだ脳が完全に覚醒しきっていないため、外部からの単調な刺激によって、より眠くなりやすくなります。
揺れが「前庭感覚」に作用し、睡眠を促す
人間のバランス感覚を司る「前庭感覚」も、電車やバスの揺れによる眠気に関係しています。
前庭感覚は、耳の奥にある「三半規管」と「耳石器」という器官が担っており、重力や加速度を感じることで、体の姿勢を保つ役割を持っています。
しかし、この前庭感覚は、適度な揺れによって刺激され続けると、脳がリラックスし眠気を引き起こすことが分かっています。
例えば、赤ちゃんを寝かしつける際に、やさしく揺らしてあげるとすぐに眠ってしまうのは、この前庭感覚が影響しているためです。
電車やバスの微細な揺れが、この前庭感覚に作用することで、脳が「リラックス状態」に入り、結果として眠気を感じやすくなるのです。
「覚醒システム」が抑制され、眠りへと導かれる
私たちの脳には、「上行性網様体賦活系(じょうこうせいもうようたいふかつけい)」という、覚醒を維持するためのシステムがあります。
このシステムは、外部からの刺激(音、光、動きなど)をキャッチして、脳を覚醒状態に保つ役割を果たします。
しかし、電車やバスの中のように、単調な刺激が続く環境では、この覚醒システムの活動が低下し、眠気を感じやすくなるのです。
また、揺れによるリラックス効果や、視覚的な刺激の少なさが相まって、さらに眠気を助長します。
まとめ
電車やバスでの寝落ちは、科学的に見ても自然な現象です。
適度な揺れや単調な刺激が脳のリラックスを促し、眠気を引き起こすのは、前庭感覚への影響や覚醒システムの抑制も関係しており、脳が休息モードに入るためです。
だからこそ、移動中に眠くなるのは体の正常な反応と言えるでしょう。
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