北海道北見市が毎年30億円の赤字に直面していると聞いて、驚きと不安を感じる人も多いでしょう。
夕張市が2007年に財政破綻し、市民生活に大きな影響を与えたことは記憶に新しいですが、北見市も「第二の夕張」となってしまうのでしょうか?
なぜ、これほどまでに財政が悪化したのか?
市はどのような対策を講じ、どんな未来を描こうとしているのか?
そして、今後も赤字が続いた場合、北見市はどうなってしまうのか?
今回は、北見市の財政危機の実態とその行方について詳しく紹介します。
なぜ北見市は赤字に陥ったのか? 財政危機の背景

北見市の財政悪化の背景には、いくつかの大きな要因があります。
① 合併によるインフラ負担の増加
2006年、北見市は周辺の3町(端野町、常呂町、留辺蘂町)と合併、これにより、市域は広がり、北海道内で最大の面積を持つ市となりました。
しかし、この合併が財政を圧迫する大きな原因となっています。
- 人口密度が低いため、インフラ整備や公共施設の維持管理費が高額になった
- 人口1人あたりの市道の長さは札幌市の約6倍
- 上水道の長さは札幌の3.4倍、下水道は2.5倍
- 体育館は14か所、図書館は8か所と、道内で札幌市に次ぐ規模の公共施設が存在
これらのインフラを維持するためのコストが増大し、財政を圧迫しているのです。
② 人口減少と税収減
北見市の人口は、ピーク時の12万人から約11万人に減少しています。
この減少傾向は今後も続くと予測されており、市民からの税収が減少することが懸念さており、特に若者の流出、働き手の減少により経済の停滞と税収減少が加速しています。
また、高齢化が進み、医療や福祉にかかる支出も増加しており、財政負担は年々大きくなっています。
③ インフラ老朽化と物価高騰
合併後に整備されたインフラも、すでに老朽化が進んでいます。
特に水道管や道路の補修・維持には莫大な費用がかかり、さらには近年の物価高騰により公共事業にかかるコストも増加しており予算の圧迫が進んでいます。
④ 基金の枯渇
北見市の財政状況は一見すると黒字に見えますが、実際には「貯金を取り崩して生活している状態」であり、極めて危機的な状況です。
2023年度の北見市の決算を見ると、以下のようになっています。
- 歳入(収入):約774億円
- 歳出(支出):約768億円
- 単純計算では6億円の黒字
しかし、この歳入の中には、約25億円の基金(自治体の貯金)からの繰り入れが含まれています。
つまり、本来の収入だけでは25億円もの赤字を補填できておらず、貯金を取り崩して帳尻を合わせている状態なのです。
この基金も、2025年度には底をつくと予測されています。
つまり、貯金を使い切った後は、さらなる赤字を補填する手段がなくなり、深刻な財政破綻へと向かう可能性が高くなります。
さらに、今後の見通しとして、2025年度からの5年間で毎年30億円以上の収支不足が見込まれています。
もしこのまま基金が枯渇すれば、北見市は財政破綻を回避するために国の管理下に置かれ、財政再生団体(実質的な破綻状態)へ移行するリスクが高まるのです。
この基金の枯渇問題は、市の財政運営において最も深刻な課題のひとつであり、財政健全化計画の成否が今後の北見市の存続を左右することになるでしょう。
北見市の財政健全化計画
北見市は、この深刻な財政危機を打開するために、2024年11月に「財政健全化計画」を発表しました。
この計画では、2025年度からの3年間で歳出削減と歳入増加を目指し、2027年度までに30億円の財政改善を図ることを目標としています。
① ごみ袋の値上げ
指定ごみ袋の価格を最大1.5倍に引き上げる計画です。
- 最も大きいサイズ(10枚入り):900円 → 1350円に値上げ予定
これは市の歳入増加を目的とした施策ですが、市民の負担増につながるため、反発の声も少なくありません。
② 公共施設の見直し
温水プールや野球場、市営浴場など、複数の公共施設を閉鎖する予定です。
- 維持費の高い施設を統廃合し、コスト削減を図る
しかし、これにより住民の生活の質が低下することが懸念されています。
③ 教育関連費用の削減
- 小中学校の統廃合を進める
- 義務教育学校の設立計画を白紙化
- 給食費の値上げ(1食あたり95円の値上げ)
教育の場が減ることで、若い世代の定住率低下を招く可能性もあります。
④ 人件費の削減
- 幹部職員の手当を20%削減
- ボーナスを最大10%削減
一方で、市職員の退職が相次いでおり、人手不足による市政の運営問題が浮上しています。
このまま赤字が続けばどうなるのか?
北見市の財政健全化計画が十分な成果を上げなかった場合、市の財政状況はさらに悪化し、最終的には財政破綻、つまり「財政再生団体」に指定される可能性があります。
これは、かつて夕張市が経験した事態と同じであり、市民生活に多大な影響を及ぼすことが予想されます。
財政再生団体に指定されると、自治体は自力で財政の立て直しができないと判断され、国の管理下で財政再建が進められ、この結果、住民サービスの大幅な削減や税負担の増加が避けられなくなります。
まず、住民サービスの削減が行われることは確実です。
公共施設のさらなる閉鎖、行政サービスの縮小、教育・福祉予算の削減など、市民の生活に直接影響する分野が対象となるでしょう。
例えば、夕張市では、市営の温泉施設や図書館の閉鎖、スクールバスの廃止などが行われました。
北見市でも、これまで検討されている以上の施設統廃合やサービスの削減が進む可能性があります。
次に、水道料金や税金の大幅な引き上げが避けられません。
夕張市では財政破綻後に水道料金が全国最高水準に引き上げられ、固定資産税や住民税も増税されました。
北見市でも同様の措置が取られると、市民の生活負担はさらに増大し、経済的な打撃を受ける家庭が増えるでしょう。
さらに、企業誘致の停滞や人口流出の加速も懸念されます。
財政再生団体に指定されると、新たな企業誘致は困難になり、自治体の経済活性化が阻害されます。
税金の負担増や住民サービスの低下を嫌った若年層の流出が加速し、人口減少がさらに進むことで、税収減少の悪循環に陥る恐れがあります。
結果として、経済の縮小が進み、市の活力が失われていくことになります。
また、インフラの維持管理が難しくなることも問題です。
道路や橋、水道管の修繕に必要な予算が確保できなくなり、都市機能の劣化が進む可能性があり、特に冬場の厳しい気候条件を考えると、除雪作業や道路補修の遅れが市民の生活に大きな影響を与えることは避けられません。
このように、財政再生団体に指定されることは、市民生活の質を大きく損ない、長期的な地域経済の停滞を招くことになります。
北見市は現在、こうした事態を避けるために財政健全化計画を進めていますが、計画の実効性が問われる段階にあります。
財政破綻を防ぐためには、市民、行政、企業が一体となって持続可能な財政運営を目指す必要があるでしょう。
まとめ
北見市の財政危機は、合併によるインフラ負担の増大、人口減少、税収減少、老朽化したインフラの維持費増加、そして基金の枯渇が主な要因です。
このままでは、財政破綻の可能性も高まっています。
北見市が持続可能な財政運営を行うためには、短期的な歳出削減だけでなく、長期的な視点での経済活性化策や税収増加のための取り組みが不可欠です。
今後の市政の動きに、私たちは注目し続ける必要があります。
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