え?20年間も違法営業?!そんな衝撃のニュースに心をざわつかせた方も多いのではないでしょうか。
札幌市にある体験型動物園『ノースサファリサッポロ』が、2025年9月をもって閉園することを発表しました。
なぜ閉園に追い込まれたのか?
そして、無許可営業20年という前代未聞の事態がなぜ続いてしまったのか?
今回は、その背景にある問題をわかりやすく紹介します。
日本一危険な動物園として人気を集めた場所

ノースサファリサッポロは、2005年に札幌市南区豊滝にオープンした体験型動物園です。
来園者がキリンやライオンなどの動物に直接エサをあげたり、触れ合ったりできるアクティビティが話題となり、「日本一危険な動物園」とのキャッチコピーも手伝って、年間約20万人が訪れる人気スポットとなっていました。
特にSNS時代においては、「他ではできない体験」が求められる中、この施設の「刺激的すぎる動物との距離感」が、若者やファミリー層から注目を集めていたのです。
しかし、その裏では、行政のルールを無視した「違法状態」が長年続いていたことは、あまり知られていませんでした。
最大の問題は場所だった?市街化調整区域での無許可建築
ノースサファリサッポロが位置するのは「市街化調整区域」と呼ばれるエリアです。
この区域は、都市計画法によって開発や建築行為が厳しく制限されており、施設を建設・運営するには、あらかじめ札幌市の許可を受ける必要があります。
ところが、運営会社である「有限会社サクセス観光」は、2005年の開園時からこの許可を取得せずに建設を強行します。
札幌市が途中でその違法性に気づき、行政指導を繰り返しましたが、同社は「いずれ改善する」といった曖昧な対応を続け、結果として20年近く無許可で営業を続けてしまったのです。
さらに、施設は年々拡張されていき、違法状態のまま運営規模が拡大していくという異常な事態が放置されてきたという現実がありました。
特定動物の無許可飼育という別の重大問題
実は建築だけではありません。
ノースサファリサッポロでは、キリンやライオン、ツキノワグマ、コブラなど「特定動物」に指定される生物を多数飼育していました。
これらの動物を飼うには、都道府県の許可が必要です。
しかし、こちらについても札幌市からの確認を怠っており、無許可での飼育が発覚、市は10回以上にわたって行政指導を行ったものの、改善されることはありませんでした。
動物福祉の観点からも、特定動物の飼育には厳格な管理と責任が伴います。
それにもかかわらず、「人気のため」「話題性のため」といった理由で許可を取らずに運営が続けられていたことは深刻な問題です。
炎上の引き金となった「アザラシと泊まれるホテル」
2024年11月、ノースサファリサッポロは新たな話題作りとして「アザラシと泊まれるコテージ」なる体験イベントをスタートさせました。
人間とアザラシが一緒に一夜を過ごすという大胆なコンセプトは、SNS上でも大きな注目を集めました。
しかし、この宿泊施設も無許可で建設された上に、札幌市からの補助金(最大約2000万円)を施設整備に充てていたことが発覚します。
税金の不適切な使用、さらに動物虐待と受け取られかねないイベント内容に対して、市民から苦情が殺到し、札幌市はついに重い腰を上げ、施設に対して「除却命令(解体命令)」を発出する事態となりました。
2025年9月、ついに閉園へ
2025年3月10日、運営会社は公式サイト上で、「2025年9月末をもって閉園する」ことを正式に発表しました。
コメントでは「法令上の問題を重く受け止めた」と記載されており、現在は飼育されている動物たちの譲渡や移動先の確保に向けて動いているとされています。
ただし、建物の撤去や動物の移送に関する計画書の提出が札幌市から求められており、閉園までにクリアすべき課題は山積みです。
まとめ
ノースサファリサッポロは、「日本一危険な動物園」として一時代を築いた存在でした。
しかしその裏では、法律や許認可を無視し続けた20年の積み重ねがあります。
人気を集めるアイデアや企画力は見事でしたが、それを支える土台となる法令遵守や倫理観が欠けていたことが、最終的な閉園という結果につながってしまったのです。
今後同様の体験型施設が登場する中で、この事例が「ルールを守る重要性」を考えるきっかけになることを願います。
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