笑いが止まらなくなる?踊り続けて命を落とす?
そんな嘘のような本当の話が、実際に世界で起きていたと聞いたら信じられますか?
私たちの心と身体は、ストレスや集団心理の影響で常識では考えられない行動を引き起こすことがあります。
今回は、病原菌もウイルスも存在しないのに人々を巻き込んでいった、2つの驚くべき謎の病についてご紹介します。
世界を驚愕させた謎すぎる病気2選
止まらない笑いの連鎖「タンガニーカ笑い病」
1962年、アフリカ・タンザニアの小さな村「カシャシャ」で、ある女子生徒3人が突然笑い始めました。
最初は些細なことのように見えましたが、彼女たちの笑いは止まることなく続き、数日以内に学校中に広がっていきます。
この現象は単なる笑いではなく、苦しげで制御できず、笑っている本人たちも困惑していたと言います。
そして、生徒の家族や近隣住民にまで影響が拡大し、最終的には約1000人が同じような症状に陥りました。
笑いが数時間でおさまる人もいれば、16日間続いた人もいたと記録されています。
学校は閉鎖され、他の村や学校にまで笑いが飛び火、最終的に14校が閉鎖されるという国を揺るがす大事件に発展しました。
医学的な調査では、感染症やウイルスなどは一切検出されず、「集団ヒステリー(集団性精神病)」という精神的な現象によるものだと考えられています。
当時のタンザニアは独立直後で、社会的な不安や教育改革のプレッシャーが子どもたちに重くのしかかっていた時代背景もあり、ストレスが引き金となったとされます。
この事件は18か月後にようやく収束しましたが、「なぜ笑いが連鎖したのか」という詳細なメカニズムはいまだに解明されていません。
踊り続けて倒れる人々「ダンシングマニア(踊りの疫病)」
1518年、フランス・ストラスブールで突如として起きたのが「踊り続ける人々」事件。
ある日、トロフェアという女性が道端で突然踊り始め、止まらなくなりました。
そしてそれを見た周囲の人々も次々と踊りだし、最終的には400人以上がまるで取り憑かれたかのように踊り続けたのです。
彼らは笑って踊っていたわけではなく、足から血を流しても、倒れても、また立ち上がって踊り出すという異常な状態で、中には疲労や心臓発作で命を落としたとされる人もいました。
この奇妙な現象に対し、当時の人々は「聖ヴィートの呪い」によるものだと信じ、教会でのお祓いや巡礼が行われました。
現在ではこの事件も「集団ヒステリー」の一例とされ、当時の飢饉や疫病、社会不安といった極度のストレスが引き金となったと考えられています。
また、別説として「エルゴット中毒」説もあります。
これは、カビが生えたライ麦に含まれる毒素(エルゴット)が幻覚やけいれんを引き起こすというもので、LSDに似た成分が含まれていることでも知られています。
しかしこの説には、同時多発的に症状が起きたことの説明がつかないため、現在では否定的な見方が強いです。
いずれにしても、踊り続けるという症状が広範囲に広がり、命に関わる事態にまで発展したこの事件は、人間の心理と身体の関係性の複雑さを物語っています。
まとめ
タンガニーカ笑い病も、ダンシングマニアも、どちらも感染症ではなく、原因不明の心の病によって引き起こされたとされる出来事です。
現代のように医学や情報が発達していない時代であっても、こうした現象が多数の人々に連鎖的に広がった事実は、「人間の心がどれほど強力な影響力を持つか」を如実に示しています。
ストレス社会とも言われる現代でも、私たちは知らぬ間に心のバランスを崩し、身体に影響を及ぼしてしまう可能性があります。
目に見えない病の怖さを改めて認識し、心のケアの大切さを考えるきっかけにしてみてください。
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