人の命を支える仕事が低賃金、夢を与える仕事が高収入…これって不公平じゃない?
子どもの成長を見守る保育士、家族のように寄り添う介護士は、どちらも欠かせない仕事なのに、なぜ給料は決して高くないのでしょうか?
一方で、プロスポーツ選手や芸能人のような職業は高年収です。
この違いって、一体どこから来るのでしょうか…?
必要不可欠なのに儲からない構造とは?
保育士や介護士の仕事が報われにくい最大の理由は、「市場原理では利益を生みにくい仕事」だからです。
ビジネスは基本的に、「お金を払える人のニーズを満たすこと」で成立します。
ところが保育・介護の現場では、サービスの受け手が子どもや高齢者といったお金を稼げない人たち。
このため、サービスの価格を自由に上げにくく、利益も出しづらい構造にあるのです。
さらに、これらのサービスは多くの場合、公的な補助金や制度によって運営されています。
国や自治体が設定する報酬基準に縛られるため、事業者が独自に給与を引き上げるのは難しく、結果として現場の人たちに十分な報酬が回らないという問題に直結しています。
加えて、「人の命を支える仕事」は、直接的に利益や数字として可視化しにくい側面があります。
売上や利益をもとに価値を判断する市場の目線では、「収益を生まない=価値が低い」と誤って解釈されてしまいがちです。
これが、経済的に評価されにくい職業のひとつの宿命と言えるかもしれません。
スポーツ選手や芸能人が高収入になる理由
それに対して、スポーツ選手や芸能人といった職業は「市場で最もわかりやすく価値が見える仕事」といえます。
その最大の理由は、希少性と経済性の高さにあります。
たとえばプロ野球選手やサッカー選手になるには、数万人にひとりの才能、環境、努力が必要です。
この「誰でもなれるわけではない」という希少性が、価値の高さを生み出します。
しかも、スポーツや芸能の世界は「見たい」「応援したい」というファンの熱意が市場価値に直結する世界です。
放映権、広告契約、グッズ販売などで莫大なお金が動いており、所属する選手やタレントにそれが高報酬として還元される仕組みが確立されています。
つまり、彼らの仕事は社会的に必要ではなくても、経済的に欲望されているという事実があるのです。
この「お金を動かす力」があるからこそ、高年収を実現できているわけです。
この格差をどう埋めるか?
ここまで見てきた通り、給料格差は「どちらが社会にとって大切か」ではなく、「どちらが市場で稼げるか」によって生まれています。
つまり、この格差を是正するには市場ではカバーできない部分を、社会全体で補うしかないのです。
まず必要なのは、国や自治体による給与支援の強化です。
たとえば、保育士や介護士の基本給の一部を国が直接補填する、専門資格やキャリアに応じて段階的に昇給できる制度を設けるなど、長期的な人材確保に繋がる仕組みが求められます。
また、雇用環境の改善も欠かせません。
長時間労働、人員不足、休日の少なさといった労働条件を改善しない限り、いくら給料を上げても定着は難しいでしょう。
さらに、社会全体の意識改革も重要です。
「誰でもできる仕事」と見なされがちな保育・介護の仕事ですが、実際は専門性と経験、そして人間力が求められる仕事です。
その尊さを広く伝えること、メディアや教育で正しく理解を広めることが、意識を変える第一歩になります。
まとめ
誰もが必要とするのに、誰もがなりたがらない、そんな職業にこそ社会はもっと光を当てるべきです。
保育士や介護士のような「人を支える仕事」は、経済の表舞台には立たなくても、私たちの生活そのものを支える屋台骨。
その価値を「給料」という形で正当に評価できる社会こそが、豊かな社会ではないでしょうか。
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