え、結婚式ってもう時代遅れなの…?そんな声が聞こえてきそうな今、ブライダル業界が危機的状況にあるのをご存じですか?
コロナ禍を境に結婚式の在り方が大きく変わり、式場の倒産も相次いでいます。
なぜ、かつて人生最大のイベントとまで言われた「結婚式」がここまで敬遠されるようになったのか…?
ブライダル業界の歴史

ブライダル業界は、かつて絶対に潰れない鉄板業界とまで言われていました。
特に1980年代後半、バブル経済期には結婚式市場が約2.5兆円規模に拡大、結婚式に1000万円かけるのも珍しくなく、新郎新婦がヘリコプターで登場するなど、派手婚が主流でした。
1990年代に入るとバブルは崩壊しましたが、結婚式市場は依然として強く、ホテルウェディングやゲストハウス婚、レストランウェディングなど新たなスタイルが登場し、ブライダル雑誌『ゼクシィ』の登場で情報もオープンになり、消費者が自分で式場を選べるようになったのも大きな進化となりました。
しかし2020年、新型コロナウイルスの流行がこの業界を一変させます。
感染拡大防止のため、式場の営業は次々と停止、挙式のキャンセル率は一部で80%を超え売上は壊滅的になります。
業界全体の売上は前年比で約900億円、実に68%も減少したと言われています。
その後、ようやく営業が再開されるも、戻ってきた顧客の多くは「なし婚」や「小規模婚」を選び、従来のビジネスモデルは崩壊し始めました。
コロナは一時的な災厄ではなく、消費者の価値観を根本から変えてしまったのです。
現在の若年層が結婚式を避ける理由は、単なる「金銭的問題」だけではありません。
以下は実際の声です。
- 「数時間のイベントに300万円以上は狂気。生活費や旅行に回したい」(30代男性・会社員)
- 「フォトウェディングで十分だった。プレッシャーも出費もなくて大満足」(20代女性・看護師)
- 「テーブルクロスやケーキナイフまで追加料金、見積もりがどんどん膨らむのが怖い」(30代女性・公務員)
他にも「親のためにやるもので、自分たちは乗り気じゃない」「SNS映えのために無理してやる必要ある?」という声も…。
特にZ世代・ミレニアル世代は、コスパと自己決定を重視する傾向が強く、式を挙げることで得られる満足度が支払うコストに見合わないと感じているのが現実のようです。
ブライダル業界の5つの致命的課題
現在のブライダル業界が直面している問題は、単なる一過性の不況ではありません。
むしろ、構造的かつ多面的な問題が複雑に絡み合っており、その根深さこそが危機の本質です。
まず第一に、少子高齢化と未婚率の上昇によって、結婚そのものを選択するカップルの数が減っています。
特に30代前半の未婚率は男性で5割超、女性でも4割近くに及び、「そもそも結婚しない人」が珍しくなくなりました。
加えて、結婚しても式を挙げない「ナシ婚」というスタイルが一般化し、式場の需要は年々縮小しています。
そこに追い打ちをかけるのが、物価高と長引く経済不況です。
若年層の可処分所得は限られており、数百万円をかけて「非日常」を演出するよりも、今後の生活や貯金、旅行にお金を回したいという現実的な思考が広がっています。
結婚式を贅沢品と捉える傾向が強まりつつあるのです。
さらに深刻なのは、業界内部の体質的な問題です。
初回見積もりから次々と追加料金が発生し、最終的な請求額が100万円以上増えることも少なくありません。
オプションの押し売りや、キャンセル時の不透明な対応などがSNSを通じて拡散され、「結婚式=ぼったくり」というイメージが定着しつつあります。
また、情報発信の遅れや人材不足も無視できません。
今やInstagramやTikTokといったSNSが集客の主戦場であるにもかかわらず、紙のチラシや電話営業に依存している企業も多く、時代の変化に適応できていないのが現状です。
加えて、ウェディングプランナーの多忙さと過重労働から、優秀な人材が次々と業界を離れていくという悪循環も進行しています。
このように、ブライダル業界は外的要因と内的要因の双方に蝕まれ、今まさに大きな転換点に立たされているのです。
それでも「結婚式を挙げたい」人のためにできること
結婚式そのものが悪いわけではありません。
多くの人が求めているのは、「気軽に」「身の丈に合った」形のウェディングです。
たとえば…
- フォトウェディング(写真だけ)|20〜30万円で済み、記念にも残る。
- オンライン結婚式|遠方の親族とも繋がれる。会場費込みでも50〜100万円前後。
- ガーデンウェディングや少人数婚|20〜30名の規模で、費用も200万円前後。
こうしたニーズに応える柔軟な提案ができるかどうかが、今後の業界存続のカギを握っているのではないでしょうか。
まとめ
結婚式を挙げることが当たり前ではなくなった今、ブライダル業界は大きな転換期に立っています。
高額なパッケージの押し売りや、画一的な式の提案では、もはや若者の心は動きません。
大切なのは、結婚式の意味をもう一度問い直し、顧客にとって本当に価値ある体験を提供することです。
「結婚式をしない」という選択肢が普通になった今こそ、「結婚式をしたい」と思わせる新たな魅力づくりが、ブライダル業界の未来を左右するかもしれませんね。
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