かつて「注文がややこしい」「コーヒーがまずい」と言われ、ファストフード界の異端児とも揶揄されたサンドイッチチェーン・サブウェイ(SUBWAY)。
日本での店舗数は急激に縮小し、このまま消えるのでは?という声さえ囁かれていました。
しかし、2024年10月に居酒屋チェーンなどを展開するワタミが日本サブウェイを買収したことで事態は一変、買収から半年が経過した今、「確かにサブウェイ、ちょっと変わったかも…」と感じている人も多いのではないでしょうか?
果たして、オワコン寸前だったブランドを立て直すためにワタミが打った改革の数々とは…?
サブウェイ再建をワタミが引き受けた理由

2024年10月、ワタミがサブウェイの日本事業を買収し完全子会社となりました。
買収当時のサブウェイは、アメリカ本社直轄ながら「低空飛行状態」で、新規出店も止まり、フランチャイズの士気も下がっていたタイミングでした。
では、なぜワタミがサブウェイの再生に乗り出したのでしょうか?
それは、ワタミ会長の渡邉美樹氏が「マクドナルドに唯一対抗できるファストフードは、野菜が多くて健康的なサブウェイだ」と語るように、日本市場で第二の柱になる可能性を見出していたからです。
実際、ワタミが経営を引き継いだ後のサブウェイは前年売上を超えるなど、数字の上でも手応えは着実に出ています。
では、実際にどのような改革をしていったのでしょうか。
改善ポイント①「頼みにくさ」の改善
サブウェイの最大の難点は、やはり注文の煩雑さにありました。
パンの種類、トッピング、ドレッシング、温めの有無…カスタマイズが売りなのに、初見殺しとまで言われる仕様が客足を遠ざけていたのです。
ワタミはこの課題を徹底分析し、以下の改革を実施しました。
- セミセルフレジの導入(「おすすめ選択」で最短2タップ注文可能)
- デジタルサイネージで注文の流れを視覚的に案内
- 注文カウンターでのコミュ障バリアを低減
さらに、接客時の態度・ミスなどに関するクレームが多かったことも明らかにされ、クレーム3回で本部が面談介入という体制まで構築、現在は「注文しやすいサブウェイ」へと変化しつつあります。
改善ポイント②「まずい」と酷評されたコーヒーを刷新
もう一つの大きな不満が「コーヒーがまずい」という声でした。
これを重く受け止めた渡邉会長は、なんと1000杯以上試飲し納得の一杯を開発、完成したのが以下のような本気の一杯です。
- アラビカ種100%、コロンビア・ブラジル・コスタリカ産豆を使用
- 原価は4倍に上昇、それでも価格は25%引き下げ
- ファストフードには珍しいスペシャルティコーヒーを提供
今では「コーヒーだけ飲みにサブウェイに行く」という人も出始めており、カフェユーザーの取り込みにも成功しつつあります。
改善ポイント③ 夜サブ戦略
これまでランチ利用が中心だったサブウェイに、ワタミはディナー市場の開拓という新たな風を吹き込みました。
具体的には、
- カルビサンドやシーフード系サンドなど「夜に合う」商品を展開
- 横浜のモデル店舗で「夜サブ」メニューを本格導入
- ポテトもホクホク感重視でリニューアルし満足度アップ
ワタミ式の「焼肉わたみ」や「三代目鳥メロ」で培ったノウハウをサブウェイにも応用し、夜のファストフード市場に挑戦しています。
店舗デザインの刷新とファストフードらしくなさ
サブウェイは今、「食べる場所」という機能だけではなく、空間価値の向上にも力を入れています。
これは「フレッシュ・フォワード」と呼ばれる、世界共通の最新店舗デザインを日本でも本格導入しているためです。
最初の導入は渋谷・桜丘の店舗から始まり、現在では池袋や横浜など、都心部を中心に着実に拡大中。
この新デザインの店舗には、以下のような特徴があります。
- 明るく開放感のある店内
- グリーンを基調としたヘルシーで自然志向の内装
- タッチパネル式のセミセルフレジによるスムーズな導線
- デジタルサイネージを活用し、商品説明を視覚的にサポート
これまでのサブウェイは、「地味で古い」といった印象を持たれがちでしたが、この刷新により「ちょっとオシャレな空間で気軽にヘルシーな食事ができる場所」という新たなブランディングに成功しつつあります。
特に女性や若年層からは、「マクドナルドや吉野家に比べて落ち着ける」「一人で入りやすい」といったポジティブな声も多くあります。
ファストフードでありながら、カフェのように空間を楽しめるスタイルは、今後の差別化要素として重要な位置づけとなりそうです。
今後の課題は手作りゆえの「品質のバラツキ」
サブウェイの魅力は、注文ごとにカスタムできる「手作りサンドイッチ」という一点にあります。
しかしその魅力は裏を返せば、スタッフの技量や意識によって品質に差が出やすいというリスクにも繋がります。
実際に、訪れた複数の店舗では以下のような声もありました。
- パンの切れ目がずれていて中身が偏っている
- 具材が不均等で片側に偏っていた
- 商品の見た目が雑で食欲がそがれる
このような問題は、「手作り=温かみがある」という利点を打ち消してしまう危険性もあります。
特に、サブウェイが目指す「3000店舗体制」という拡大路線では、品質の均一化は喫緊の課題です。
現段階では、クレーム3回で本部面談が行われる仕組みや、スタッフへの教育強化などが進められていますが、今後はさらに徹底した仕組みが求められるでしょう。
例えば、「組み立て工程のマニュアル動画化」、「品質監査を行う巡回スタッフの配置」、「SNS等での盛り付け批判への早期対応」など、もちろんこれらを徹底すればするほど、人件費や教育コストが上がる懸念もあるため、効率と品質のバランス取りが非常に重要になります。
「自由度の高さ=不安定さ」でもあるというサブウェイ特有のジレンマをどう乗り越えていくのか、このバラツキ問題の解決こそが、ワタミ主導のサブウェイ改革の最終ハードルになるはずです。
まとめ
ワタミによるサブウェイ改革は、「奇抜なアイデア」ではなく「根本的な弱点の改善」に徹している点が評価できます。
頼みにくさ、味の低評価、夜に弱い、空間に魅力がない、などの課題を一つひとつ丁寧に改善し、サブウェイは確実に信頼を取り戻しつつあるのです。
まだ「完全復活」とは言えないかもしれませんが、地道な改善の積み重ねこそがブランド再生の王道、サブウェイは今、オワコンの烙印を跳ね除け再び日本人の胃袋をつかもうとしています。
そして、その舵を握るのがワタミ、この挑戦は今後の外食業界にも大きな影響を与えるかもしれませんね。
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