海の中で暮らしている生き物なら、当然海水を飲んで生きているはず!私たちの多くがそう思い込んでいます。
でも、実はそうではないんです…海に暮らしながらも、海水を飲めない、いやむしろ「飲んではいけない生き物」たちがいます。
今回はその代表格ともいえる、海の生き物2選を紹介します。
マナティー

海にいるのに海水を飲めない生き物の代表格として知られるのが、「マナティー」です。
ジュゴンの仲間である彼らは、アメリカのフロリダ沿岸などの温暖な海域や河口に生息していますが、実は体の構造上、海水を飲むことができません。
マナティーの腎臓には高濃度の塩分を濾過し排出する能力があまりなく、海水を摂取してしまうと体内の塩分濃度が急激に上昇し、健康に悪影響を及ぼすおそれがあるのです。
そのため、海に住みながらも淡水が不可欠という、ちょっと不思議な生活を送っています。
水分補給の方法としては、淡水域へ移動して直接飲むほか、水分を多く含んだ水草を食べることでも補給しています。
また、雨が降った直後の海面には一時的に真水が浮かぶことがあり、そのタイミングで飲むこともあります。
実際、乾季になるとマナティーたちは淡水を求めて数十キロにわたって移動することが確認されており、彼らにとって水を見つけることはまさに生死に関わる問題なのです。
時折、人間がホースで水を与えている様子も見られますが、これは必ずしも推奨されている行為ではありません。
なぜなら、人間に慣れてしまうことでボートとの衝突事故が起きやすくなったり、野生の本能が鈍ったりする恐れがあるためです。
それでも「水が飲めない」という前提で生きるマナティーの生態は、私たちにとって驚きと同時に、命の繊細さを感じさせるものがあります。
イルカ

イルカもまた意外なことに海水を飲んで生きているわけではありません。
むしろ、彼らも基本的に海水を飲まないようにしています。
では、どのようにして体の水分を補っているのかというと、主に食べ物からです。
イルカは日常的に魚やイカなどの獲物を食べていますが、それらの体内に含まれる水分が、イルカにとって重要な水分源となっています。
体内で食物を代謝する際に得られる「代謝水」と呼ばれる水分が、生命維持に必要な水分の多くをまかなっているのです。
さらにイルカの腎臓は、体に入ってきた塩分を効率よく濾過し、尿として排出する高度な機能を持っています。
そのため、わずかに摂取した塩分も問題なく処理できる仕組みが整っており、あえて海水を飲む必要がないのです。
こうした身体の進化のおかげで、イルカは海水の中で生活しながらも、塩分の過剰摂取を避けられるようになっています。
水族館でイルカが氷をもらっているシーンを見たことがある方もいるかもしれませんが、あれは単に遊び道具として与えているだけでなく、れっきとした水分補給や暑さ対策のためでもあります。
氷は真水でできているため、イルカが安心して口にできる水分源なのです。
また、非常に知能が高いイルカにとって、氷をくわえて転がしたりするのは遊びにもなり、精神的な刺激にもなります。
つまり、氷は水分補給とエンタメの両方の役割を果たしているのです。
まとめ
このように、私たちが「海の生き物=海水を飲んで生きている」と思い込んでいることが、実はそうではないという例は意外と多いのです。
マナティーもイルカも、見た目には分からないけれど、繊細な体の仕組みと環境への適応能力によって、毎日を生き抜いています。
海は広く、奥深い場所ですが、そこに住む生き物たちの多くは、見えない部分で日々必死に生きているのです。
私たちがそうした生態を理解し、ほんの少しでも配慮をもって接することができれば、共に地球を守っていく一歩となるのではないでしょうか。
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