どこにでもある便利なコンビニ、かつては小売業の代表的存在でしたが、近年は売上が最高水準に達しながらも、店舗数の拡大が頭打ちとなり成長産業とは言いにくい状況となっています。
その一方で、ドラッグストア業界は統合や出店ラッシュを背景に拡大を続け、今やスーパーに代わる生活インフラとしての地位を確立しつつあるのです。
なぜ、同じ小売業の中でこれほど差が生まれているのでしょうか…。
コンビニが直面する成長の限界
コンビニエンスストアは、長年にわたり小売業の成長ドライバーでした。
セブン-イレブンをはじめとする大手3社が全国を網羅し、国内店舗数は5万5千店を超えています。
しかし近年は新規出店余地がほとんどなく、既存店同士の競合が激化、さらに人手不足や深夜営業の採算悪化、光熱費の高騰といったコスト増に直面し、店舗網は「量より質」へと方向転換しつつあります。
つまり、コンビニは「便利さ」で一定の地位を保ちながらも、成長余地は限られているのです。
ドラッグストアが支持される理由
対照的に、ドラッグストアは急成長を遂げています。
背景にはまず「価格競争力」、医薬品の利益率を活用し、ティッシュやおむつ、飲料などを赤字覚悟で安売りできるため、生活者にとっては「とにかく安い店」として認知されやすいのです。
さらに、薬だけでなく食品・日用品・化粧品などを一度に購入できる「ワンストップショッピング」が可能で、特に地方ではスーパー代わりとしての役割を果たしています。
つまり、ドラッグストアは「スーパーより安く、コンビニより幅広い」存在として消費者の心をつかんでいるのです。
もうひとつの強みは、医療・健康サービスとの連携です。
多くの店舗が調剤薬局を併設し、病院帰りに処方箋を受け取れる利便性を提供しています。
また、高齢化が進むなかで介護用品や健康相談サービスを拡充し、地域の「かかりつけ薬局」として機能、中には高齢者向けの休憩スペースを設ける店舗もあり、単なる買い物の場を超えて「地域コミュニティの拠点」となっているのです。
このように、医療と日常生活を結びつける役割を担えるのは、コンビニやスーパーにはないドラッグストア独自の強みです。
統合とスケールメリット
業界再編もドラッグストアの成長を後押ししており、2025年12月には業界1位のウエルシアホールディングスと2位のツルハホールディングスが経営統合し、売上高2兆円規模の巨大企業が誕生予定です。
2032年には売上3兆円・営業利益2100億円を目指すと公表しており、規模のメリットを最大限に活用した低価格戦略がさらに加速する見込みです。
仕入れ力の強化や物流効率化によって「より安く・より便利に」を実現できれば、消費者にとっての魅力は一層高まるでしょう。
まとめ
コンビニは利便性という強みを持ちながらも、店舗網の飽和やコスト増により大きな成長は見込みにくい状況です。
その一方で、ドラッグストアは「安さ+便利さ+医療連携」を兼ね備え、日常生活の幅広いニーズに応える存在へと進化しました。
さらにM&Aによる統合で規模を拡大し、低価格戦略を強化する動きも進んでいます。
人口減少や高齢化、物価高騰といった社会変化を背景に消費者が求めるのは、安くて安心しかも便利な場所、その条件を満たすドラッグストアこそが、今後の小売業界をけん引していくことになるでしょう。
あわせて読みたい|マタイク(mataiku)