博多駅から徒歩10分、キャナルシティ博多の隣にそびえる巨大ビルが実は今、廃墟になっているのをご存じでしょうか?
一等地にも関わらず放置されているその建物は、かつてユニクロやH&M、ZARAなどが入居した「キャナルシティ博多イーストビル」、2011年に華々しく開業しながら、わずか12年で閉館しました。
なぜこのような状況になっているのか、そして今後どうなるのか?今回はイーストビルの誕生から閉館、さらに現在の姿までを紹介します。
華々しい誕生と短すぎた栄光
キャナルシティ博多イーストビルは、2011年9月30日にオープンしました。
場所はキャナルシティ本館の東側、かつて駐車場だった敷地です。
地下1階・地上5階建て、延べ床面積約17,500㎡という中規模の商業施設ながら、開業当初は大きな注目を集めました。
目玉は九州初出店となったH&Mで、オープン初日には夜明け前から行列ができるほどでした。
他にもZARA、ユナイテッドアローズ、アーバンリサーチドアーズなど、当時のトレンドを牽引するファッションブランドが軒を連ね、「福岡の新しいファッション発信地」として若者やファミリーで賑わいます。
飲食フロアでは「シェーキーズ」が人気を集め、本館との回遊性の高さも相まって、キャナル全体の東の翼として期待されていました。
年間売上60億円を目標に掲げ、まさに順風満帆の船出を切ったのですが、時代は急速に変わります。
ファストファッションブームは徐々に落ち着き始め、2018年には「マークイズ福岡ももち」が開業、さらに2022年には「ららぽーと福岡」が誕生し競争は激化します。
加えて消費者の関心は、モノ消費から体験消費へ移行、イーストビルは柔軟なリニューアルが難しく、時代のニーズに対応できなかったのです。
コロナ禍と再開発の暗転
追い打ちをかけたのが新型コロナウイルスでした。
2020年以降、外出自粛で来館者は激減し、好調だったインバウンド需要も消滅、ECの普及もありファッション特化型のイーストビルは収益を大きく落とし始めます。
2023年5月7日、ついに閉館…開業からわずか12年で幕を下ろすことになりました。
閉館後、福岡地所は跡地に高級賃貸住宅や商業施設を含む複合施設を建設する計画を発表しました。
下層階に商業テナント、上層階にマンションを配置する都市型再開発として注目されましたが、2024年7月に計画は見送りになります。
建設費の高騰や人手不足が大きな要因であり、さらに経済情勢の変化も重なって再開発は先送りとなってしまったのです。
この結果、イーストビルは解体もされず、閉館から2年近く経つ現在もそのまま放置されいる状態です。
一等地に残された廃墟
2025年現在のイーストビルは、外観こそ築浅で大きな劣化はありませんが、窓は白いシートで覆われ内部は閉鎖、植物は枯れており稼働していないのは一目で分かります。
それでも最低限のメンテナンスが施されているのか、典型的な廃墟というほど荒れてはいません。
しかし立地を考えると、この状態はあまりにもったいない…すぐ隣には2023年に開業した地下鉄七隈線「櫛田神社前駅」があり、人の流れはむしろ増えています。
さらに周辺には新しいホテルも次々と建設され、観光客やビジネス客で賑わうエリアとなっています。
もしイーストビルが営業を続けていれば、駅 → イーストビル → キャナルシティ本館という流れが形成され、地域経済に大きなプラスをもたらしていたはずです。
また、この土地にはかつて幻の計画が存在しました。
2008年にはオリエンタルランドとディズニー社が共同で「世界初の屋内型ディズニー施設」を福岡に誘致する構想を進めていたのです。
リーマンショックで計画は頓挫しましたが、もし実現していれば福岡の都市景観は全く違ったものになっていたでしょう。
そう考えると、イーストビルの存在は単なる商業施設以上に、街の夢と挫折の象徴といえるのではないでしょうか…。
まとめ
キャナルシティ博多イーストビルは、わずか12年で閉館、その後の再開発計画も頓挫し、2025年現在も一等地に巨大廃墟として残されています。
外観はまだ新しく再利用の可能性も残されていますが、放置されている現状は福岡の都市開発における課題を浮き彫りにしています。
都市は常に変化を繰り返し、成長と停滞を織り交ぜながら未来へ進みます。
イーストビルがこれからどのように活用されるのか。その行方は福岡という街の発展を占う試金石となるのではないでしょうか。
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