ファミレスといえば、一時期はどの店舗でも当たり前のように導入されていた「卓上タブレット注文」、しかし最近ではガストやデニーズ、ジョイフルといった大手チェーンでもタブレットが次々と姿を消し、代わりにスマホを使ったQRコード注文へと移行する流れが加速しています。
なぜ便利に思えた仕組みが短期間で廃れていっているのでしょうか?
その背景には、見過ごされがちなコスト問題や世代ごとの利用スタイル、そして時代の変化が深く関わっていました。
タブレット普及の背景と見えないコスト

タブレット注文が普及した最大の理由は、慢性的な人手不足を補うためでした。
客が直接入力することで店員の労力を減らし、聞き間違いや伝票ミスを防ぎ、クレーム対応コストの削減にもつながりました。
さらに紙メニューの印刷や差し替えにかかる経費も抑えられ、季節メニューや価格改定を即座に反映できる柔軟性も魅力的で、外食産業にとって効率化とコスト削減を同時に実現できる仕組みに思えたのです。
しかし実際には、タブレット導入には大きな落とし穴がありました。
まず、タブレットは買い切りではなく、1台あたり月2000円ほどのリース料が必要で、20〜30台設置する店舗では数万円の固定費になります。
さらにレジ連動や注文アプリにかかるシステム利用料が月5万円前後、店内全体をカバーするWi-Fiや通信環境の整備に月5〜6万円、故障時の修理やアップデート対応にも同額程度の費用がかかります。
こうした費用を合算すると、1店舗あたり月20万円、年間にして200〜300万円の負担、さらに導入時には初期費用300万円も必要でした。
人件費削減を見込んだにもかかわらず、結果的に維持費が重荷となり、特に客足の少ない地方店舗では採算が合わないという現実が浮かび上がってきたのです。
また、コストの問題に加え、利用者からもタブレットへの不満が噴出していました。
特に高齢者にとって、タブレット操作は大きなハードルとなり、若い世代からはメニューが複雑化し、どこにあるかわかりづらいという声も多くあります。
つまり、ファミレスにおいては、誰にとっても使いやすい仕組みとは言えなかったのです。
スマホ注文の台頭と共存の行方
そこで近年主流となりつつあるのが、スマホを使ったQRコード注文です。
席ごとに設置されたQRコードを読み取れば、自分のスマホからメニューを見てそのまま注文できる仕組みで、支払いまで完結できる店舗も登場しています。
また、QRコード導入により、高齢者は無理にタブレットを操作する必要がなく従来通り店員に直接注文できるようになりました。
そして最大のメリットは、タブレットに比べて圧倒的に低コストで運用できる点です。
QRコード発行や注文アプリの利用料は月2〜3万円程度、保守費用を加えても月10万円以内に収まり、タブレットの半分以下で済みます。
さらに、共用タブレットのように、汚れている・壊れている、といったリスクがなく衛生面でも安心です。
さらにAI技術の発展により、売れ筋メニューや混雑状況に応じたレコメンド機能も可能になり、注文効率や売上向上にもつながると期待されています。
タブレットが残る業態と今後の展望
もっとも、すべての外食業態からタブレットが消えるわけではありません。
回転寿司や食べ放題の焼肉チェーンのように、一度の来店で大量に注文する業態では、タブレットが依然として有効です。
寿司を何十皿も頼む、焼肉をシェアする、といった場面では、全員が見られる共用タブレットがある方が圧倒的に便利だからです。
スマホ注文も補助的には導入されつつありますが、メインは今後もしばらくタブレットが担い続けるでしょう。
一方で、ファミレスは今後ますますスマホ注文へとシフトしていくと考えられます。
コスト削減、衛生管理、そして顧客体験の向上という三拍子が揃い、時代に即した仕組みだからです。
タブレット注文の激減は「、不便だから消えたのではなく、外食産業が世代や時代に合わせて進化している証拠なのです。
まとめ
ファミレスにおけるタブレット注文は、高額な維持費や利用者の不便さが課題となり、スマホ注文により柔軟で低コストな仕組みに取って代わられています。
若い世代にとっては効率的、高齢者にとっては自由度を取り戻す方法として、QRコード注文は双方にメリットをもたらしています。
今後、タブレットは回転寿司や焼肉といった業態に残りつつも、ファミレスではスマホ注文が当たり前の光景になるでしょう。
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