刃物も拷問具も使わないのに、なぜこんなに残酷なのか?
もし古代の処刑法に興味があるなら、「スカフィズム」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
これはペルシャで実際に用いられたとされる恐怖の処刑法、人間の想像をはるかに超えるスカフィズムの恐怖に迫ります。
スカフィズムの恐怖
スカフィズム(Scaphism)は、古代ペルシャで考案された最も非人道的かつ残虐な処刑法の一つとされています。
驚くべきは、そこに刃物も火も使われないという点、使用されるのはわずかに加工された木製の箱(または舟)と甘いミルクと蜂蜜だけなんです。
しかしこのシンプルな素材の組み合わせが、被害者にとっては地獄のような日々をもたらします。
まず、処刑される人間は全裸にされ、上下に分かれた木製の舟(または中がくり抜かれた丸太)に挟まれ、頭と手足だけが外に出る状態で固定されます。
そして…ここからが本当の地獄の始まりです。
犠牲者には強制的に大量のミルクと蜂蜜を飲まされ、腸内をかき乱されることで下痢を誘発、やがて舟の中は自らの排泄物で満たされ、身動きできないまま汚物に浸かることとなるのです。
さらに顔や手足、体の露出した部分にも蜂蜜が塗りたくられ、炎天下の川や沼、あるいは日光の当たる野外に放置されます。
その甘い香りに引き寄せられてくるのは、無数のハエや虫たちです。
虫たちはただ集まるだけでは終わりません。
顔や手足に止まり、皮膚を破り、体液を吸い、さらには排泄物の中に卵を産みつけていくのです。
その卵が孵化すれば、ウジ虫が誕生し、やがて皮膚の裂け目から体内へと侵入し始めます。
肛門や性器といった粘膜部分、あるいは既に傷ついた皮膚から内部に入り、体の内外両面から肉を食い荒らしていくとされています。
この間、犠牲者は食事として再び蜂蜜とミルクを与えられ続け、脱水や飢餓で死ぬことは許されません。
虫に喰われ、体中が腐敗していく中で、意識だけははっきりと保ったまま、死ぬよりも辛い時間が延々と続くのです。
記録によれば、あるペルシャの兵士ミトリダテスは、このスカフィズムによって17日間も生存し続けた末に絶命したとされています。
この数字からも、この処刑がいかに「死に至らせること」ではなく、「死ぬまでの苦しみを与えること」に重きを置いていたかが分かります。
なぜここまで残酷になれたのか?
スカフィズムは、ただの処刑ではなく反逆者や国家に対する裏切り者に対する見せしめ的制裁として用いられていたと考えられています。
痛みや恐怖でその場にいる者を黙らせるのではなく、人間が徐々に腐っていく様を見せつけることで、他の人々に強烈な教訓を残す、まさに「恐怖による統治」の一環だったのです。
当時のペルシャでは、統治者に歯向かうことは命だけでなく尊厳すらも奪われる行為でした。
これは、肉体的苦痛・精神的絶望・社会的辱めのすべてを兼ね備えた刑罰であり、人間が生み出した最も非道な「人間らしい」処刑法だとも言えるでしょう。
また、現代の拷問研究や人道的処刑に関する議論においてもスカフィズムは、人道の完全なる逆行として引用される存在でもあります。
まとめ
スカフィズムは、刃物も拷問具も使わず、それでいてここまでの苦痛を与えるという点で、歴史上最も凄惨とも言われています。
ペルシャという古代国家の背景と、権力による恐怖政治の象徴であったこの処刑法は、単なる歴史の一コマではなく、「人間の狂気」がどこまで行くのかを教えてくれる警鐘でもあります。
現代の我々がこの事実を知ることには、ただの興味本位ではなく、非人道的行為を繰り返さないための学びとしての価値があります。
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