映画や海外ドラマでよく見る、空に向けた威嚇射撃や祝砲、実際に行うとどうなるのでしょうか?
真上に撃てば安全と思われがちですが、それは大きな誤解で落ちてくる弾丸は驚くほどの速度を保ち、世界ではこれが原因で命を落とした人も少なくありません。
今回は、空への発砲がなぜ危険なのか、そして実際に起きた悲劇的な事例をもとに紹介します。
空に撃つと弾はどうなる?
銃弾を真上に撃つと、一瞬で数百メートルから1キロほどの高さまで上昇します。
その後、重力の影響で再び地上に落下しますが、重要なのは空気抵抗があるため、加速と減速が釣り合った終端速度に達することです。
この終端速度は弾丸の形や重さによって異なりますが、時速200〜300kmに達することもあり、人間の頭蓋骨を貫通するほどのエネルギーを持つといわれています。
つまり、上に撃った弾も地上に戻ってくるときには十分な殺傷力を持っているのです。
また、空気の流れや風の影響で弾はわずかに傾いた軌道をとり、予想もしない方向へ飛んでいくことがあり、まったく無関係な人が被害に遭う危険性があるのです。
斜めに撃つ方が危険
真上に撃つよりも危険とされるのが、斜めに撃つケースです。
角度をつけて発砲すると、弾丸には垂直方向だけでなく水平方向の速度が加わります。
この水平成分は重力の影響を受けにくく、空気抵抗も少ないため、より遠くまで高速で飛び続けるのです。
このため、射出角度がついた弾丸は「流れ弾」として広範囲に被害をもたらす可能性があります。
実際、アメリカや中東では新年のカウントダウン時に「祝砲」として空に発砲する風習が一部に残っていますが、落下弾の死亡事故が毎年のように報告されています。
特にアメリカ・アラバマ州やテキサス州では、年越しの瞬間に流れ弾が住宅を直撃し、子どもが亡くなった事例もあります。
法律でも禁止される空への発砲
こうした事故の多発を受け、アメリカの一部の州では空への発砲を明確に法律で禁止しています。
例えばアリゾナ州では、空に向けて発砲するだけでも「シャノンズ・ロー」という法律で刑事罰の対象になります。
これは2000年、年越しの流れ弾で少女シャノン・スミスさんが亡くなった事件をきっかけに制定されたものです。
日本でも、もちろん銃の所持や発砲は厳しく制限されています。
つまり、「ちょっと空に向けて撃っただけ」「威嚇のつもりだった」という言い訳は一切通用しません。
発射された弾丸は誰かの命を奪う可能性がある以上、発砲そのものが社会的に許されない行為なのです。
まとめ
空への発砲は、たとえ真上でも安全ではありません。
弾丸は必ず地上に戻り、終端速度に達すれば人の命を奪う威力を持ちます。
見た目の派手さや一瞬の高揚感の裏には、取り返しのつかない現実があります。
弾は必ず落ちてくる、それを忘れてはいけません。
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