ガラガラなのに潰れない…街の一等地に堂々と構える高級外車ディーラー、前を通るたびに「客が全然いないけど、大丈夫なの?」「あれでやっていけるの?」と疑問に思ったことありませんか?
しかし驚くべきことに潰れるどころか、むしろブランド価値を維持・向上させ続けているのです。
今回は、そのビジネスの裏側に迫り、なぜガラガラでも黒字が出るのかを解説します。
アフターサービスが収益の要

高級ディーラーの主な収益源は、車の販売ではありません。
実は、販売後の整備・点検・カスタマイズ・車検・保証対応といった「アフターサービス」が最も大きな利益を生んでいます。
特にメルセデス・ベンツ、BMW、ポルシェなどの輸入高級車は、パーツが高額で日本車に比べて故障リスクも高め、そのためオーナーの多くが「正規ディーラーでの整備」を希望し、リピーターとして何年も通い続けるのです。
さらに、延長保証プランやメンテナンスパックなども豊富に用意されており、1契約で数十万円レベルの収入になることもあります。
つまり、たとえ新規客が少なくても、「既存客の維持管理だけで収益が出る構造」になっているのが最大の強みなのです。
1台で数百万の利益が出る理由
高級外車は、価格設定そのものが別次元です。
ベンツSクラスやポルシェ911、レクサスLSといったモデルは、新車価格が1000万円〜3000万円にも及びます。
これらの車を1台販売したときに、ディーラーに入る粗利(あらり)はなんと100万〜200万円前後にのぼるケースもあります。
一方、一般的な国産車(トヨタ・カローラや日産ノートなど)は、1台あたりの粗利が数十万円前後、この差がいかに大きいか言うまでもありません。
つまり、高級ディーラーは「数を売らなくても利益が出るビジネスモデル」、月に数台売れるだけでも採算ラインを超えることができるのです。
さらに、法人契約や富裕層向けのカスタム車の販売など、一般の目に触れにくい契約が水面下で成立している場合も多くあります。
加えて、高級車の下取り再販(中古車ビジネス)でも利益が見込めます。
自社で下取りした車をオークションに流すのではなく、自社で整備し中古車として再販することで大きな粗利を得る手法も一般的です。
ショールームの意外な役割
人がいない=儲かっていないと思いがちですが、それは小売店や飲食店の感覚です。
高級ディーラーにおいては、ショールームは単なる販売拠点ではなく、ブランド戦略の要(かなめ)といえる存在です。
たとえば、ポルシェセンター青山やレクサスのINTERSECT BY LEXUSは、車の展示だけでなく空間デザイン・アート・カフェスペースを通じて、ブランドの世界観を体験させる設計になっています。
つまり、こうしたショールームは「売る」ための場であると同時に、「そのブランドがどういう価値観を持っているのか」を示すためのショーケースでもあるのです。
加えて、これらの店舗はメーカーの広報戦略に組み込まれており、広告費やブランディング費用として位置づけられることも多く、多少の赤字が出ても企業全体のイメージ向上につながれば問題視されません。
見えない営業が動いている
来店者が少なくても、「売れていない」とは限りません。
高級ディーラーでは、表に出てこない「営業の本丸」が水面下で進行しています。
たとえば、各ディーラーには専属営業マンが存在し、長年の付き合いがある富裕層顧客と直接連絡を取り合います。
高級ホテルのラウンジや会員制レストランなど、オフィス外で商談を行うことも日常茶飯事で、一見すると「人がいない店舗」でも、実際には別の場所で売買契約が成立しているのが実情です。
また、富裕層や経営者層との関係性を構築することで、紹介や法人契約に発展するケースも多く、1人の顧客が数台をも購入することも良くあります。
これはまさに人脈営業、信頼営業の世界で、一般のディーラーでは真似できない、高級ブランド特有の営業スタイルなのです。
まとめ
表向きは閑散として見える高級外車ディーラーですが、そのビジネスは「販売後の継続収益」「高粗利構造」「ブランド戦略」「個別営業」でしっかりと成り立っています。
目に見えない部分で収益を生み出し、少数の上顧客との信頼関係で長期的な利益を確保しているのです。
つまり、ガラガラなのに潰れないのではなく、ガラガラでいられるほど完成されたビジネスなのです。
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