かつては、出会いの場として若者を中心に人気を集めた「相席屋」、異性と気軽に飲んで話せる場として、週末の繁華街には長蛇の列ができたものです。
しかし、最近では「女性だけが残されている」「ご飯目当ての来店が多い」「閉店が相次いでいる」といった声が相次ぎ、業界そのものが衰退の道をたどっているとも言われています。
一体、相席屋に何が起きているのでしょうか?
出会いの主戦場がアプリへと移行した

相席屋の衰退を語る上で避けて通れないのが、マッチングアプリの急成長です。
PairsやTinder、タップル、Omiaiといったサービスがスマートフォン1台で完結する手軽さが若者を中心に利用が急増しました。
特に男性にとっては、相席屋よりもマッチングアプリの方がコストパフォーマンスが良いと判断されがちです。
相席屋では1回あたり3,000〜6,000円の出費がかかるのに対し、アプリなら月額数千円で複数の相手とやり取りできます。
さらに、事前に相手の写真やプロフィールを見られる点も、初対面の緊張を避けたい層には好都合です。
その結果、リアルでの偶然の出会いに魅力を感じなくなった層が増え、相席屋は顧客の奪われる形となりました。
乞食動物園化した現場と崩れた男女バランス
相席屋の最大の売りは、女性無料・男性有料という料金設定により、多くの女性を集客できる仕組みです。
しかし、この構造が裏目に出始めました。
男性が激減し女性だけが席に取り残されている、ご飯目当ての女性が増えマッチングすら成立しない、こうした状況を皮肉って、ネット上では「乞食動物園(=女性が無料で居座る場所)」という蔑称まで登場したのです。
女性側も、「期待して行ったのに相席できず帰った」「タイプでない人と無理にマッチングされて気まずかった」などの不満を抱えリピート率が低下、結果として、男女ともに満足度が落ち悪循環に陥ったのです。
さらにSNSでは「相席屋はもうオワコン」といった書き込みも目立ち、ブランドイメージの失墜にもつながっています。
コロナ禍とアフターコロナで激変した出会いの形
2020年から始まった新型コロナウイルスの流行も、相席屋にとっては致命的な打撃でした。
店舗営業の自粛や時短要請、3密回避といった制限により利用者は激減、固定費が重い店舗型ビジネスは次々に閉店を余儀なくされました。
一部の店舗ではオンライン相席サービスなどの試みもありましたが、あくまで代替策に過ぎずリアル店舗の本質的な魅力には到底届きませんでした。
そしてコロナが明けても、人々の価値観は大きく変わったまま、「知らない人とリアルで会うのが怖い」「自分のペースでやりとりできるアプリが快適」といった心理が定着し、相席屋に戻ってくる客は限られてしまったのです。
かつては画期的だった相席屋のビジネスモデルですが、現代では制度設計そのものが時代に合っていないとも言われます。
男性が一方的に負担する料金体系は、「男女平等の観点からもおかしい」という批判の的になり、さらにはマッチングの質を高める工夫が不足、「タイプじゃない人と無理に組まされるだけの場所」と認識されるようになってしまいました。
その一方で、より高級感やテーマ性を打ち出した競合サービスが増加します。
たとえば「オリエンタルラウンジ」は、料理の質や内装、接客などトータルで体験価値を重視しており利用者の満足度を確保しています。
また、趣味でつながるイベント型の出会い(オタ活、ワークショップ、料理教室など)も人気を集めています。
つまり、単なる「男女が出会う場」というコンセプトだけでは、差別化が難しくなってきているのです。
まとめ
相席屋は、今や時代に取り残されつつある業態になりつつあります。
マッチングアプリの普及、価値観の多様化、コロナによる行動変容、制度設計への疑問といった複数の要因が重なり業界全体が危機的状況に至っています。
ただし、出会いのニーズ自体がなくなったわけではありません。
今後求められるのは、「リアルならではの体験価値」「安心できるマッチング」「柔軟な価格設計」など、ユーザー目線に立ったアップデートです。
相席屋が再び人を惹きつける場所になるためには、ただ座るだけではない、付加価値ある出会いの場へと進化する必要があるでしょう。
変化を恐れない姿勢こそ、これからの出会い業界に必要な一手ではないでしょうか。
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