最近コンビニで、底が深いだけ?なんか小さくなった気がする?と感じたことはありませんか?
それは、いわゆる「ステルス値上げ」かもしれません。
そんな時代に真っ向から逆行し、「47%増量!」と打ち出したのがローソンの盛りすぎチャレンジです。
一見すると赤字覚悟の大盤振る舞いに見えますが、実はこの裏にはしっかりと儲けのカラクリが仕込まれていたのです。
SNSで話題沸騰となったこのキャンペーンの裏側に迫ってみましょう。
価格据え置き×47%増量は本当に赤字なのか?
ローソンが2023年2月に始めた「盛りすぎチャレンジ」は、価格を据え置いたまま対象商品の内容量を最大47%も増量するという驚きの企画でした。
なぜ47%かというと、全国47都道府県の人々に届けたいという思いを込めたという粋な理由も話題になりました。
プレミアムロールケーキやガトーショコラ、焼きそばパンなどが対象となり、実際には47%どころか2倍近くの重量だった商品もあったと言われています。
たとえばロールケーキは通常時のカロリーが219kcalに対し、盛りすぎ版は418kcalとほぼ倍、原材料費や容器のコストが跳ね上がっていることは容易に想像できます。
では、実際に儲けは出ているのでしょうか?
155円で販売されているロールケーキの原価はおおよそ7割、つまり108円と仮定すると、47%増量で原価は158円まで膨らみます。
すでに販売価格を超えており、売れば売るほど赤字の状態と考えられます。
それでもローソンはキャンペーンを繰り返し実施、なぜ採算が合わないキャンペーンを続けるのか?
ここに、儲けるためのカラクリが潜んでいるのです。
戦略的赤字、その裏で狙うのはシェアの奪取
実はこのキャンペーンの本当の狙いは短期的な利益ではなく、中長期的な市場シェアの拡大にあります。
コンビニ業界はセブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンの3強が競い合い、わずかなシェアの変動が年間売上に数百億円規模の影響を与えるシビアな世界です。
ちょっとコンビニ寄ろうかなと思ったときに、どの店舗が頭に浮かぶか?
この第一想起を勝ち取ることが、来店数の増加=売上の拡大に直結します。
ローソンは「盛りすぎチャレンジ」によって強烈なインパクトと話題性を作り、「ローソン=お得」「ローソン=面白い」というブランドイメージを消費者の中に刷り込もうとしたのです。
仮にこの施策で市場シェアが1ポイントでも上昇すれば、コスト増分は余裕で回収できるという計算になります。
つまり、赤字商品で注目を集め、別の部分でしっかり回収するという長期的収益戦略が隠されているのです。
SNS時代を制す!見た目インパクトがバズを生む
ローソンの盛りすぎチャレンジがここまでバズった理由の一つに、「誰が見ても分かる見た目の変化」があります。
プレミアムロールケーキは、従来は中央にクリームが配置されていましたが、盛りすぎ版ではクリームが山のように盛られ、見た瞬間に違いが分かる仕様になっています。
また、キャラメルコーンの増量版は袋の大きさが3倍以上、袋を開けた瞬間、「えっ!?」と感じさせる視覚効果こそがSNSに拡散される原動力です。
このように、ローソンは「比較対象がないと人間は変化に気づきにくい」という心理法則(=ウェーバー=フェヒナーの法則)を応用し、あえて通常商品との差を際立たせる見せ方を徹底しました。
結果としてSNSでの「映え」「拡散」「共感」が一気に加速し、広告費ゼロで全国規模のマーケティング効果を生み出したのです。
本当に儲けはないのか?間接的収益と囲い込み戦略
直接的には赤字でも、「ついで買い」による間接的な利益を生む仕掛けがここにはあります。
例えば、盛りすぎロールケーキを目当てにローソンに来店した人が、せっかくだからおにぎりも、飲み物も、となるケースを想定します。
これがバスケット単価(1人あたりの合計購入額)を引き上げる可能性があるのです。
ただし、他社の増量キャンペーン(例:ファミリーマート)では「ついで買い」があまり発生しておらず、安さ目当て層は単価が伸びづらいという実情もデータから判明しています。
とはいえ、ローソンの場合は、「何かと一緒に買いたくなる見た目」や「ついSNSに載せたくなる体験」によって、来店機会そのものを増やす効果があります。
また、1回でも好印象を与えられれば、「次もローソンに行こうかな」となる囲い込み効果も期待でき、顧客生涯価値(LTV)の向上にもつながります。
まとめ
ローソンの盛りすぎチャレンジは、単なる赤字覚悟の話題作りではなく、見た目の工夫、心理学の応用、市場戦略の巧妙さが組み合わさった、緻密に設計されたマーケティング戦略です。
値上げが当たり前の時代にあえて「増量」で逆張りすることで、消費者の信頼と興味を引き、最終的にはローソンへの来店動機と記憶の定着を狙ったこの施策は、SNSでの拡散と市場シェアへの影響を通じて、赤字商品以上の価値を生み出す「逆転の発想」の好例だと言えるでしょう。
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