いつでも下ろせる”はもう昔?ATM激減の真相と現金派が知らない新常識
最近、近所のATMがなくなっていて困る…そんな声が全国で増えています。
ピーク時には12万台あった日本のATMは、今や7万台にまで減少しています。
キャッシュレス化が急速に進む中で、「もう現金もATMも不要なのでは?」という意見もありますが、それでもATMは完全には消えません。
今回は、ATMが減少した本当の理由と、それでも「0にならない理由」を社会背景とともに紹介します。
ATMが急減した背景には何があるのか?

ATMが全国的に急速に減少しているのは、単にキャッシュレス化が進んだから、という単純な理由ではありません。
その背後には、銀行業界の経営戦略や社会構造の変化、テクノロジーの進化などいくつもの要素が重なっています。
まず、ATMを1台設置・維持するのには、年間で100万〜150万円ものコストがかかるとされています。
現金の補充や回収に必要な警備・輸送費も重なれば、費用はさらに膨らみ、銀行にとっては、もはやATMは「儲からない設備」なのです。
また、ネットバンキングやスマホアプリの普及もATM離れに拍車をかけています。
振込や残高確認はスマホひとつで完結でき、若い世代はATMそのものを使わないことも珍しくありません。
かつては生活の必需品だったATMも今では、わざわざ使う必要のないものへと位置づけが変化してきています。
さらに近年では、特殊詐欺対策としてATMの利用制限も強化されています。
2025年からは1日に30万円を超える引き出しが制限されることになり、現金を取り扱うことを前提としたATMの存在意義も問われつつあります。
加えて、スマートフォンの普及とともにキャッシュレス決済が一気に拡大したことも要因のひとつです。
とくにガラケーの終了により、高齢者もスマホを使い始め、タッチ決済やQRコード決済が当たり前になりつつあります。
こうして現金を引き出す機会自体が減り、ATMの役割も薄れているのが現状です。
それでもATMが完全になくならない理由
ATMは減少を続けていますが、完全にゼロになることは考えにくいでしょう。
なぜなら、現金の需要そのものがなくなっていないからです。
たとえば、日本は現金志向の強い国です。
キャッシュレスが広がっているとはいえ、いまだに高齢者層を中心に「現金で払うのが安心」という意識が根強く残っています。
お年玉や香典、家賃の現金払いなど、場面によっては電子決済が使いづらい文化的背景もあります。
また、災害時のリスクも見逃せません。
大地震や停電などで通信インフラがダウンすれば、QRコード決済やクレジットカードは一切使えなくなります。
さらに、日々の売上を現金で受け取る業種では、銀行に預け入れるためのATMが欠かせません。
現金を扱う前提の経済活動がまだまだ根強いのです。
ATMはどこから消えるのか?
ATMは今後、「必要とされる場所にだけ残る」選別の時代へと突入しています。
都市部では、銀行の支店や主要駅、ショッピングモールなど利用頻度の高い場所にATMが集中し、近所のスーパーや商店街のような場所からは徐々に姿を消していくでしょう。
一方、地方や山間部では、より厳しい状況が予想されます。
すでに人手不足やコスト面から撤去が進んでおり、その流れは今後も加速する可能性があります。
とはいえ、地方には高齢者や現金依存の住民が多いため、完全にATMをなくすのは現実的ではありません。
そこで、近年では自治体庁舎やスーパーマーケットに複数の銀行が共同で設置する「共用ATM」が広まりつつあります。
また、かつては「どこでもATMがある」といわれたコンビニにも変化の兆しが見えています。
採算が合わないと判断された店舗では、ATMの撤去やサービス縮小が進み、都心部でも使えないコンビニATMが出てきています。
今後は、ATMの利便性を前提とした生活スタイル自体を見直す必要があるかもしれません。
まとめ
これからのATMは、「誰にでも、どこにでも」あるものではなく、「必要とされる場所に、必要な形で残る」インフラへと変化していくでしょう。
私たちがこれから問われるのは、本当に現金が必要な時どうやって入手できるのか、という新しい現金との付き合い方なのかもしれません。
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