庶民の味として長年愛されてきた餃子の王将、しかし近年、その王者に異変が起きています。
相次ぐ値上げ、店舗ごとの味のばらつき、そして人手不足、売上高は過去最高を更新し続ける一方で、常連客の足は確実に遠のいているのです。
なぜ、かつての人気チェーン店が、オワコンとまで囁かれるようになったのでしょうか…?
相次ぐ値上げがもたらした崩壊
1967年、京都で創業した餃子の王将は、「早く・安く・美味しく」をモットーに日本の外食文化を支えてきました。
しかし、ここ数年で価格構造は大きく変化し、2022年から2024年の間に5度の値上げを実施、餃子はついに310円超え、ラーメンとセットでは1,100円を超える店舗も増えてきました。
原材料や人件費、光熱費の高騰は避けられない事情とはいえ、かつての安くて腹いっぱい食べられるという魅力が薄れ、気軽に行ける店ではなくなったという声が相次いでいます。
特に学生やファミリー層など、昔ながらの常連客の離脱が顕著で、SNSでは「高い」「昔ほど感動しない」「味が落ちた」といった不満も散見されます。
一方でインバウンド客が増え、海外ではラーメン1杯が1,000円を超えるのが一般的であるため、観光客には適正価格に見えるのです。
つまり、王将の値上げは国内客離れを招く一方で、外国人需要を取り込むための価格戦略でもあったといえるでしょう。
手作り文化がもたらす二面性
餃子の王将の最大の特徴は、他の外食チェーンにはない店舗手作り調理です。
多くの飲食チェーンがセントラルキッチンで食材を一括生産する中、王将ではスープ作りから餃子の餡、チャーハンの炒めまで各店で行っています。
このライブ感が、王将が長年支持されてきた理由ですが、そのこだわりが今、経営を圧迫しています。
手作り調理には高いスキルが必要で、新人教育には膨大なコストがかかり、ベテラン社員は育成と現場を兼任し、1日12時間以上働く店長も珍しくありません。
慢性的な人手不足によりサービス品質が低下し、「昔より遅い」「接客が雑になった」との声も増加しています。
しかし、この現場主義は革新的ではありますが、店舗ごとの味のバラつきを生む要因にもなっています。
相次ぐトラブルと信頼回復への努力
餃子の王将は、これまで数々の危機を乗り越えてきました。
2013年には大東隆行社長が本社前で銃撃されるという前代未聞の事件が発生、2022年には卓上の調味料容器に虫が混入していた動画がSNSで拡散され話題となりました。
いずれのトラブルにも迅速に対応、結果的に炎上や大規模な不買運動には至らず、信頼を一定程度維持することに成功しています。
とはいえ、企業のブランド力は「一度の対応」で完全に戻るものではありません。
長期的に見れば、こうした不祥事の積み重ねが消費者の潜在的不信感として残り、客離れの一因になっていると考えられます。
業績絶好調、それでも不安が残る理由
表面的には、餃子の王将の経営はむしろ順調です。
2024年3月期には売上高1,014億円、営業利益100億円を達成、翌2025年3月期も増収増益で、財務的には過去最高水準にあります。
この好業績を支えるのが「ロイヤルカスタマー戦略」です。
アプリ会員制度により、シルバー・ゴールド・プラチナ会員とランクアップする仕組みを導入、常連客には割引クーポンや特典を提供し、リピーターの囲い込みを強化しています。
また、ジャストサイズメニューなど一人客向けの小皿メニューを展開するなど、客層の多様化にも対応しています。
しかし、売上の伸びとは裏腹に、現場の疲弊とブランドイメージの低下が進行している点は見逃せません。
数字は好調、客の心は離れつつある、まさに今の王将を象徴する言葉です。
まとめ
餃子の王将の客離れは、単なる値上げによる一時的な現象ではありません。
人手不足や品質格差、経営現場の疲弊、それらすべてが複合的に絡み合い、かつての庶民の味は変わりつつあります。
原点である「安く・早く・美味く」を、時代に合った第二の王将改革に期待するばかりです。
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