鉄板を囲み、笑顔で箸を伸ばす、そんな風景があと10年で消えてしまうかもしれません。
物価高、人手不足、そして後継者不在が重なり、このままではお好み焼き店が2035年までに半減する可能性があるというのです。
なぜ、庶民の味がこれほどまでに追い詰められているのでしょうか…。
粉もん文化の現実
2025年、お好み焼きやたこ焼き、焼きそばといった粉もん店の倒産はわずか半年で17件、前年同期比で3割以上の増加となり、過去15年で最多ペースに達しました。
特にお好み焼き店の割合は8割超、安くてお腹いっぱいというイメージが強く、値上げが難しい業態だからこそ、コスト上昇に耐えられずに姿を消しているのです。
負債1億円未満の小規模店が約8割を占めることからも、経営体力の脆さが浮き彫りになります。
光熱費や小麦粉、油、ソースの価格は上がり続け、最低賃金の上昇も追い打ちをかけ、まさに値上げできない構造不況に至っています。
さらに深刻なのは後継者不足です。
熟練の技を学びたいという若者が激減し、「技術を継ぐ人がいない」「焼き方を教える時間も余裕もない」そんな声が現場から上がります。
一枚の鉄板の上で培われた職人の技術が、世代交代できないまま途切れていく…それは単なる経営問題ではなく、文化の喪失そのものです。
広がる格差、粉もん文化の再生
粉もん業界が抱える苦境は、一時的な不況ではなく、問題の本質は価格を上げられない社会構造にあります。
お好み焼きは安くあるべきという消費者意識が根強く、店側もその期待に応えようとして自らを追い詰めてきました。
そこに重なるのが観光需要の偏りです。
観光地やチェーン店は外国人客でにぎわう一方、住宅街の小さな店には恩恵がほとんどありません。
多言語メニューやキャッシュレス導入といった対応が必要と分かっていても資金も人も足りない、結果として成功する店と取り残される店の格差が広がっています。
こうした中でも、テイクアウトの強化、地域イベントへの出店、SNSによる情報発信など、少ない投資で再起を図る動きが出ています。
お好み焼の、2035年問題は単なる飲食業界の危機ではなく、日本の生活文化の危機でもあります。
一部地域では、外国人スタッフが技術を学び、海外でもOKONOMIYAKIを広め始めています。
そして消費者である私たちにもできること、「安いからではなく文化を守るために」という選択、その気持ちこそが文化の火を消さない唯一の手段です。
まとめ
お好み焼きの危機は、単なる飲食業界の問題ではなく、日本人の暮らしそのものの揺らぎです。
守るべきは価格ではなく、技と心、そして人をつなぐ食卓の温もりです。
この香ばしい文化を、次の世代へと焼きつないでいくこと…それが今、私たちにできる一番の恩返しと言えるでしょう。
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