第二次世界大戦時、日本軍が着用していた戦闘帽、その後ろに付いた「帽垂布(ぼうたれぬの)」は、見た目から一部では「ダサい」と揶揄されてきました。
しかし、このシンプルな布こそが、南方戦線の過酷な環境で数えきれない命を守ったと言われています。
なぜ、たった一枚の布が「10万人の兵士を救った」とまで評価されるのか?その意外な理由と効果を歴史的背景と共に紹介します。
帽垂布とは何か?その歴史と由来

帽垂布とは、戦闘帽の後部に取り付けられた布で、首筋からうなじを覆う形状をしています。
日本軍の戦闘帽に付けられたこの布は、第二次世界大戦期の軍服を象徴する特徴の一つとして知られています。
意外にも、このデザインは日本独自の発想ではありません。
もともとは北アフリカ駐屯のフランス軍が採用していたもので、強烈な日差しや砂嵐から兵士を守る目的で使用されていました。
日本はこの実用的なデザインに注目し、熱帯・亜熱帯地域での戦闘に備えて導入します。
南方戦線においては、日差しによる皮膚障害や日射病、熱中症は深刻な脅威でした。
また、スコールのような強い雨が体温を急激に奪い、体調不良や病気を引き起こすことも珍しくなく、帽垂布はこうした気候条件に対応するための、極めてシンプルながら効果的な装備だったのです。
なぜ「10万人の兵士を救った」と言われるのか
メディアは、この帽垂布によって旧日本軍は病気や環境要因による犠牲者を約10万人減らせたと紹介しています。
この数字は正確な戦史資料に基づくものではない可能性がありますが、少なくともその効果は無視できない規模だったと考えられます。
帽垂布の効果は多岐にわたります。
- 直射日光の遮断
布が首筋を覆うことで、日焼けや熱中症のリスクを大幅に低減、南方戦線では特に有効でした。 - 雨による体温低下防止
スコールや長時間の降雨でも首元を保護し、体温の急激な低下を防ぎ、また免疫力の維持にもつながります。 - 皮膚病予防
亜熱帯特有の湿気や雑菌、カビによる皮膚病の発症を抑制しました。 - 虫除け効果
布が風でひらひらと動くことで、蚊やハエなどを近づきにくくし、マラリアなどの感染症リスクを下げました。
こうした要因が重なり、戦闘そのものよりも環境や病気による戦闘不能者を大幅に減らすことができたと推測されます。
戦史の中では、戦場環境への適応が勝敗や生存率に直結することが多く、帽垂布はその好例と言えるでしょう。
現代にも受け継がれる帽垂布の知恵
帽垂布の発想は、戦後も形を変えて受け継がれています。
現代のアウトドア帽や作業帽では、同様の首筋カバーを備えた製品が多く存在します。
これらはアルミ蒸着素材やチタン繊維、赤外線カット機能を備え、より軽量で耐久性の高い構造に進化、例えば建設現場や農作業、登山や釣りといった炎天下の活動において、熱中症予防は極めて重要です。
現代の帽子は、旧日本軍の帽垂布と同じく首元を覆い、紫外線や熱から身体を守る役割を果たしています。
このように、軍事用として生まれた技術やデザインが、民間の日常生活や産業分野に応用される事例は多く帽垂布もその一例です。
過去の戦場で生まれた知恵が、形を変えて現代人の命を守り続けているのです。
まとめ
帽垂布は、見た目こそ簡素で地味な装備ですが、その効果は計り知れません。
日差しや雨、虫や病気から兵士を守り、南方戦線の過酷な環境で戦闘能力を維持するために不可欠な存在でした。
中国メディアが「10万人の兵士を救った」と報じたのも、その重要性を示す象徴的な表現でしょう。
現代の我々も、先人たちの知恵を活かした装備や工夫を日常生活に取り入れ、厳しい環境から身を守る意識を持つことが大切です。
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