スーパーでよく見かける「子持ちししゃも」、名前のとおり卵がぎっしり詰まった魚を想像する方が多いでしょう。
ところが、パッケージには時折「子持ちししゃも(オス)」という表記が…オスなのに卵があるの?と疑問に思ったことはありませんか。
実はそこには消費者を混乱させないための工夫や、ししゃも市場の歴史が隠されています。
今回は、その真相と知られざるオスししゃもの魅力を紹介します。
本物のししゃもと代用魚カラフトシシャモの違い

まず理解しておきたいのは、スーパーで流通している「子持ちししゃも」の多くは、北海道太平洋沿岸にしか生息しない本物のししゃもではなく、カラフトシシャモ(英名:カペリン)という代用魚だという点です。
カラフトシシャモはカナダや北欧から大量に輸入され、日本の食卓に安定して並ぶようになりました。
その結果、ししゃもと言えば卵入りが当たり前というイメージが定着したのです。
本物のししゃもは非常に希少で、価格も高騰しています。
対してカラフトシシャモは大量に流通しており、手頃な値段で購入できるため、私たちがスーパーで手に取る子持ちししゃもの大半はこちらになります。
この代用魚文化が、日本人の「ししゃも=卵入り」という固定観念を強めたとも言えます。
子持ちししゃも(オス)表記の真実
では、なぜオスにまで「子持ち」という名前が付いているのでしょうか。
結論から言うと、オスが卵を持つことは絶対にありません。
魚も哺乳類と同じく、卵を産むのはメスだけ、オスに卵があることは自然界ではありえないのです。
ではなぜスーパーで「子持ちししゃも(オス)」と書かれるのか…?
それは消費者の誤解を防ぐための表記です。
多くの人は「ししゃも=卵入り」と信じています。
そのため、ただ「ししゃも(オス)」と書くと「卵が入っていない=不良品」と勘違いされてしまう可能性があるのです。
そこで、商品ブランドとしては子持ちししゃもを冠しつつ、オスだから卵は入っていませんと伝えるために(オス)と明記しているのです。
実は1980年代には、メスから取り出した卵を注射器でオスの口から入れる人工子持ちオスの製造が試みられたこともありました。
しかし、流通量の増加で価格が下がり、手間のかかる方法は採算が合わなくなったため現在では行われていません。
オスししゃもの魅力と選び方
卵を持たないオスししゃもは、一見すると「外れ商品」のように思われがちですが、実は通の間では人気があります。
理由はシンプルで、オスの方が身が厚く、旨味が濃いからです。
メスは卵に栄養を取られるため、身の部分が薄くなりがち、一方でオスはその分しっかりと脂が乗り、魚そのものの味を楽しめるのです。
卵のプチプチ食感を楽しみたいならメス、魚本来の味を堪能したいならオス、と好みに合わせて選ぶのがおすすめです。
スーパーで「子持ちししゃも(オス)」と書かれた商品を見かけたら、ぜひ一度試してみると新しい発見があるかもしれませんよ。
まとめ
子持ちししゃも(オス)という表記は、オスが卵を持つという意味ではなく、卵が入っていないことを消費者にわかりやすく伝えるためのものです。
しかし、オスには身が厚く旨味が濃いという魅力があり、卵入りメスとはまた違った価値があります。
スーパーで見かけたら、「卵の食感を楽しむか」「魚の旨味を味わうか」という視点で選んでみると、ししゃもをもっと奥深く楽しめるでしょう。
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