この先立入禁止、日本にはただの危険地帯ではなく、人が足を踏み入れてはいけない理由を持つ土地が存在し、そこには国家の機密や、崩れゆく遺構、神聖な信仰といった重く深い背景が隠されています。
今回は、そんな封印された日本の一端をのぞき込みながら、立入が禁じられた場所を3つ紹介します。
猿ヶ森砂丘(青森県)

青森県下北半島の東端に広がる猿ヶ森砂丘は、全長約17km・幅2kmにも及ぶ日本最大級の砂丘です。
しかしこの地は、観光客が一歩も踏み入れることができない完全な禁足地となっています。
理由は、この一帯が防衛装備庁の下北試験場として使用されているためです。
ここではミサイルや誘導兵器の弾道試験、レーダー装置の実験など、防衛機密に関わる研究が行われています。
砂丘全体が実験区域のため、一般人の立入は法律で厳しく制限されており、空撮やドローン飛行も禁止、その全貌を知る者は限られています。
地元でも静寂に包まれた謎の砂丘として知られ、SNS上では日本のエリア51と呼ばれることもあります。
自然の静けさと国家機密が共存する、異様なほど整然とした風景は、まさに人が近づけない理由を体現しています。
第六台場(東京都)

東京湾の中央に浮かぶ第六台場は、幕末期に黒船来航へ備え、徳川幕府が築いた海上砲台のひとつです。
同じ時期に建造された第三台場が公園として観光地化されているのに対し、第六台場は今も立入禁止の人工島となっています。
その理由は、老朽化による崩落の危険性に加え、島全体が貴重な野鳥の営巣地となっているためです。
東京都の環境保全資料によると、第六台場は「学術的に貴重な生態系保護区域」に指定されており、人の立ち入りが自然環境に悪影響を及ぼすおそれがあるとされています。
かつては江戸の防衛拠点だった砦が、今では都市の中の自然保護区として静かに残されているのです。
夜、レインボーブリッジの明かりに照らされて浮かぶ第六台場の影は、まるで過去の記憶が東京湾に取り残されたかのような幻想的な光景を描き出します。
入砂島(沖縄県)
沖縄県の渡名喜島(となきじま)から北西約5kmに位置する入砂島は、古くから神々が宿る島とされてきました。
島内には御嶽(うたき)と呼ばれる聖域が点在し、地元住民は古来より人が足を踏み入れてはならない場所として上陸を禁じています。
戦後、この島は米軍に接収され、出砂島射爆撃場として使用された歴史を持ち、現在も訓練水域として指定されています。
宗教的信仰と軍事利用という二つの理由で立入禁止が続くなか、さらに注目されるのが、島周辺がアオサノリ(アーサ)の名産地であることです。
豊かな海藻資源は地元漁業の命でもあり、環境保全と漁場維持のためにも上陸は制限されています。
このように、信仰・軍事・自然環境の三要素が重なり合う神聖かつ現実的な禁足地として、入砂島は今も人の立ち入りを拒んでいます。
まとめ
禁足地は、国家の安全保障、自然環境の保護、そして信仰の継承といった、人間社会が築き上げてきた深い理由があります。
猿ヶ森砂丘は国防を担う実験の場、第六台場は生態系を守る都市の砦、入砂島は神々と自然の共存を象徴する聖域、それぞれが人が入らないことによって成り立ち、今なおその静寂を保っています。
私たちは近づけないからこそ、そこに宿る意味と歴史を知り、敬意をもって見つめる必要があるのかもしれません。
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