クルド人が日本で話題になることが増えていますが、彼らの歴史や背景を知っていますか?
クルド人は世界最大の「国を持たない民族」とされ、約2,500万~3,500万人が中東地域に住んでいます。
今回は、クルド人のルーツや日本に来る理由について紹介します。
クルド人とは?そのルーツと歴史
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クルド人は、主にトルコ・イラン・イラク・シリアにまたがる「クルディスタン」と呼ばれる地域に住む民族です。
彼らの言語であるクルド語は、インド・ヨーロッパ語族のイラン語派に属し、ペルシャ語やパシュトゥー語に近い言語になります。
クルド人の歴史は非常に古く、古代メディア王国(紀元前7世紀)やペルシャ帝国の時代にはすでに中東に存在していました。
しかし、彼らが独立した国家を持つことはなく、常に他の大国の支配を受けてきたのです。
20世紀に入り、第一次世界大戦後の1920年に締結されたセーヴル条約で、クルド人の独立国家の建設が一時的に認められました。
しかし、1923年のローザンヌ条約でオスマン帝国の領土がトルコ、イラク、シリアなどに分割された結果、クルド人の独立は実現せず、複数の国に分断されてしまいました。
その後もクルド人は独立運動を続けましたが、各国政府からの弾圧を受け、現在に至るまで独立国家を持つことができていないのです。
各国のクルド人の状況
■トルコの状況
トルコには約1,500万人のクルド人が住んでおり、国内の少数派として長年抑圧を受けています。
トルコ政府は、クルド語の使用を禁止する政策を取っていた時期もあり、クルド文化の抑圧が続いていました。
また、クルド労働者党(PKK)が独立運動を展開していますが、トルコ政府はこれをテロ組織とみなして弾圧を強化しています。
そのため、トルコ国内のクルド人は独立を求める動きを続ける一方で、政府の取り締まりに苦しんでいるのです。
■イラクの状況
イラクのクルド人は、2005年に「クルディスタン地域政府(KRG)」の自治権を獲得し、半独立状態にあります。
2017年にはクルド独立を問う住民投票が実施され、独立支持が圧倒的多数を占めましたが、イラク政府や周辺国の強い反対を受け、独立は実現しませんでした。
それでも、クルディスタン地域は経済的な独立性を高め、イラク政府と交渉を続けています。
■シリアの状況
シリアのクルド人は、2011年のシリア内戦の混乱の中で、北部に「ロジャヴァ自治政府」を樹立しました。
これにより、クルド人はシリア国内で一定の自治を確立しましたが、トルコ政府はこの動きを「テロ組織」とみなし、軍事的な攻撃を続けています。
シリアのクルド人は国際社会の支援を受けながらも、周辺国との対立によって安定した自治を築くことが難しくなっています。
■イラク’の状況
イランのクルド人は約800万人おり、政治的な権利が大きく制限されています。
クルド人による独立運動や自治権の要求は、イラン政府による厳しい弾圧を受けてきました。
2022年には、クルド人女性のマフサ・アミニさんが警察に拘束された後に死亡した事件をきっかけに、全国的な抗議運動が発生しました。
この事件により、イラン国内のクルド人に対する弾圧はさらに激化し、独立や自治の要求は難しい状況となっています。
クルド人が日本に来る理由
クルド人が日本に来る理由は大きく3つあります。
- 迫害や戦争からの避難(難民としての移住)
トルコやイランでは、クルド人に対する弾圧が続いており、政治的な理由で迫害を受ける人々が日本に逃れてきています。
しかし、日本の難民認定率は極めて低く、クルド人のほとんどは認められません。 - 経済的な理由(出稼ぎ労働)
トルコではクルド人の職業選択が制限されることもあり、より良い生活を求めて日本に来るケースがあります。
特に埼玉県川口市・蕨市にはクルド人のコミュニティがあり、建設業や工場で働く人が多いです。 - 家族・知人を頼るコミュニティの存在
日本にはすでに在住しているクルド人が多く、新たに来日する人々はそのつながりを頼りに移住してきます。
クルド人の多くは「難民申請中」の状態で日本に滞在していますが、日本の難民認定率が極めて低いため、在留資格を得るのが難しい状況です。
- 難民申請が通らない → 仮放免の状態では自由に働けず、生活が困難。
- 日本の入管政策 → 収容施設に長期間拘束されるケースもある。
- 地域社会との摩擦 → 文化や言語の違いからトラブルが発生することも。
2023年には埼玉県でクルド人によるデモが行われ、日本の警察との衝突が報じられました。
クルド人が直面する問題は、今後さらに注目される可能性があります。
まとめ
クルド人は「国を持たない最大の民族」であり、トルコ・イラク・シリア・イランに分かれています。
歴史的に独立国家を持とうとしたが、各国の反対で実現できてません。
戦争や迫害、経済的理由から日本に来るクルド人が増えているが、日本では難民認定率が低く、在留資格を得るのが難しい状況にあります。
クルド人問題は、日本だけでなく世界的にも議論されるべき重要なテーマとなっていくでしょう。
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