近年、日本をはじめとする先進国で注目されている「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」。
少ない支出と安定収入で早期リタイアを目指すこのライフスタイルは、高金利の国ではより実現しやすいはずですよね?
ロシアは2025年現在、預金利息がなんと10%以上という驚異的な数字を記録しており、政策金利も21%という高水準です。
では、なぜそんな環境にあるロシアでは、FIREを選ぶ人がほとんどいないのでしょうか?
ロシアの銀行金利が高すぎるワケ
まず注目すべきは、ロシア中央銀行が政策金利を21%に据え置いている点です。
この背景には、10%を超えるインフレ率の抑制があり、高騰する物価への対応として中央銀行が資金流通を抑える目的で金利を引き上げているのです。
その結果、各銀行の定期預金や国債の利回りも引き上げられ、10〜15%台の利息が提示されることも珍しくありません。
日本では0.001%台の普通預金利率が一般的であるため、ロシアの金利水準は非常に魅力的に映ります。
仮に日本円で1000万円を年利10%で預けた場合、年間100万円の利息が得られる計算になります。
生活費の安い地方都市であれば、それだけで暮らしていくことも理論的には可能です。
それでもFIREをする人が少ない理由
ところが実際のロシアでは、FIREを目指す人はほとんど存在しません。
その主な理由は以下の通りです。
- 為替リスクが極端に高い
ロシアの通貨ルーブルは非常に不安定で、制裁や経済制約の影響でドルやユーロに対して急落することが度々あります。利息で得た利益が為替差損によって簡単に相殺されてしまう可能性が高いため、外貨保有者にとってはリスクが大きいのです。 - インフレによる実質金利の低さ
金利が10%あっても、同じく物価上昇率が10%以上であれば実質的にはお金の価値は変わりません。預けた金額の額面は増えても、日常の買い物で買える量が変わらなければ、FIREとしての意味は薄れます。 - 金融・資本規制の存在
ロシアはウクライナ侵攻以降、SWIFTからの排除や資本規制が強まり、外国人が自由に資産を出し入れすることが困難になっています。また、外国からの送金やルーブルから外貨への両替にも制限がかけられており、投資環境としての自由度が非常に低いのが実情です。 - FIRE文化が根付いていない
そもそもロシア社会においてFIREのようなライフスタイルはあまり知られていません。長期的な雇用が一般的であり、投資や資産形成を通じて早期リタイアを目指すという発想そのものが、まだ一般市民に浸透していないという現実があります。 - 社会的セーフティネットへの不安
仮に早期リタイアしたとしても、医療や年金制度への不安が根強く、病気や老後の備えとして安定収入を持っておく必要があると考える人が多いです。そのため、預金利息だけに頼るFIREスタイルは危険と見なされやすいのです。
短期なら可能性あり?しかし…
短期的には「高金利+物価が安定している期間」をうまく活用すれば、預金利息で生活費をカバーすることは可能かもしれません。
特に単身者で節約志向の人であれば、1〜2年程度の仮FIREを経験することは現実的かもしれません。
ただし、そのためには為替リスク・政情リスク・流動性リスクなどをすべて受け入れる覚悟が必要です。
仮にルーブルが急落すれば、資産の大半を失うこともありえます。
さらに、日本に戻る際の為替損や送金制限も問題となります。
まとめ
ロシアの銀行金利が10%以上というのは事実であり、一見すればFIREとの相性が良さそうに思えます。
しかし、高インフレ・不安定な通貨・政治リスク・社会制度の不安定さなど、複数のリスクが重なっているため、現実的にはFIREに適した国とは言えません。
「高金利=FIREしやすい」ではなく、「安定した制度と通貨の裏付けがあるかどうか」がFIRE実現のカギです。
ロシアの例は、金利だけに飛びつくことの危険性を教えてくれます。
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