私たちが今、何気なく口にしている人気の食材の中には、かつて「食べ物」として見なされていなかったものが意外とあります。
保存技術の未熟さや、誤解された見た目・分類、文化的な偏見が原因で、今では考えられないような絶品が捨てられていたなんて信じられますか?
今回はそんなもったいなさすぎる過去を持つ3つの絶品食材を紹介します。
ホルモン
現在では焼肉店の定番中の定番である「ホルモン」ですが、実は戦後まで日本国内では牛や豚の内臓肉は捨てられる部位とされていました。
内臓は臭いや見た目の印象から「汚い」「食べるものではない」とされ、特に一般の飲食店では扱われることすら稀だったのです。
しかし、このホルモン文化に光を当てたのが、在日韓国・朝鮮人の人々でした。
食糧不足の戦後の時代、限られた食材を余すことなく利用する知恵として、牛や豚の内臓を丁寧に下処理し独自の調理法で美味しく提供、この文化が関西を中心に広がり、「放るもん(捨てるもの)」から転じて「ホルモン」という名称が定着したという説もあります。
現代では、シマチョウやミノ、センマイといった部位が通をうならせ、ビールとの相性も抜群です。
また、健康志向の中で、低糖質・高たんぱく食品としても再注目される存在です。
ハラミ
焼肉の人気部位として不動の地位を築いた「ハラミ」も、実は一昔前まではほとんど注目されない部位でした。
赤身のように見えながら、分類上は内臓に属するハラミ(正確には横隔膜)は、内臓肉として流通していたため、過小評価されていたのです。
一因には「内臓=臭みがある、硬い」というイメージがあったことも挙げられます。
特に日本では、かつて肉食文化が薄かった背景もあり、内臓系の部位は避けられる傾向がありました。
しかし実際は、ハラミは脂の乗りがよく、噛みごたえと柔らかさのバランスが絶妙、加熱しても硬くなりにくく、味も濃厚で旨味たっぷりです。
安価だった時代にハラミの旨さに気付いていた人は通だったと言えるでしょう。
今では焼肉屋の看板メニューとして、赤身派も脂派も納得の支持を集めています。
トロ
いまや高級寿司ネタの代名詞とされる「トロ」、特に中トロや大トロは、口に入れた瞬間にとろける脂の美味しさで多くの人を虜にしています。
ですが、そんなトロも、かつては「猫もまたいで通る」と言われるほど、人気がなかった部位でした。
その理由は主にふたつあります。
ひとつは、脂の多い部分は傷みやすく、保存技術の発達していなかった時代にはすぐに腐敗してしまったこと、もうひとつは、脂っこいものを避ける食文化が根強く、「赤身こそがマグロの本命」という価値観があったためです。
猫またぎという言葉は俗説ではあるものの、実際に1950年代まではトロが市場に出回ることは稀で、むしろ廃棄対象とされていた記録も残っています。
しかし、冷凍技術が進化し、トロの鮮度が保てるようになると、その価値は一変、銀座の高級寿司店が提供を始めたことで一気に需要が高まり、「トロ=高級品」という現在のイメージが定着しました。
まとめ
今回紹介したホルモン、ハラミ、トロに共通しているのは、もともと美味しかったのに、捨てられていたという点です。
保存技術の限界や文化的偏見、誤解によって見過ごされてきたこれらの食材は、時代の変化とともに食のスターとして返り咲きました。
逆に言えば、今もまだ価値を見いだされていない食材が、未来のグルメ界を変えるかもしれませんね。
食材の可能性を狭めないこと、それが私たちにできる美味しさの発掘なのかもしれません!
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