あなたは「野生児(フェラル・チルドレン)」と呼ばれる子供たちの存在を知っていますか?
親に捨てられたり、事故で孤立した子供たちが、人間社会から隔絶され、犬やオオカミ、鶏と共に生き延びた、そんな現実離れした話が実際に世界中で報告されています。
今回紹介する3人の実在する事例は、笑い話では済まされない人間とは何か?という根源的な問いを突きつけてきます。
動物に育てられた子どもたち3選

「オクサナ・マラヤ」犬に育てられた少女
ウクライナ出身のオクサナ・マラヤは、1983年に旧ソ連時代の貧しい家庭に生まれました。
3歳の頃、アルコール依存症だった両親から事実上見捨てられ、家の裏にある犬小屋で暮らすようになります。
そこで彼女は、5年間にわたり犬とともに生活を送り、発見されたのは8歳の時です。
通報した近隣住民によって警察が駆けつけたところ、四つん這いで歩き、唸り声をあげ、まるで犬のように振る舞う少女がそこにいました。
言葉はほとんど話せず、人間の社会的振る舞いは一切失われていたといいます。
その後、児童保護施設でのリハビリを経て、言語の訓練や生活指導がなされましたが、過去の影響は深く根付き社会に適応することは容易ではありませんでした。
オクサナは今も支援施設に住みながら、動物の世話をして暮らしていると言われております。
彼女の事例は、環境がいかに人間性を左右するかを物語っています。
言語能力や社会性は本能ではなく、育てられた環境によって形成されるものだという事実を、強く印象づける実例です。
「スジット・クマール」鶏と過ごした少年
フィジー出身のスジット・クマールは、「鶏に育てられた少年」として知られる異色の野生児です。
ただし、正確には鶏と同じ小屋に閉じ込められていたというのが正しい表現です。
彼の不遇は幼少期から始まります。
母は自殺、父は殺害され、スジットは祖父に引き取られますが、祖父も精神疾患を抱えており彼を鶏小屋に閉じ込めてしまったのです。
食事も排泄もすべてを鶏と共に行う生活が続き、発見されたのは12歳の時です。
彼は餌をついばみ、舌を鳴らし、羽ばたきの真似をし、行動の一部には鶏のような癖が染み付いていたといいます。
人間を見ればくちばしのように突き、攻撃的な態度を示していたとも…。
その後、老人ホームに引き取られますが、攻撃的な行動のために20年以上もベッドに縛り付けられた状態で過ごすことになりました。
ようやくボランティア女性に支援され、32歳から人間らしい環境で生活を送る兆しが見え始めたようです。
スジットの人生は、愛情とケアの欠如がどれほど人を壊すかを示す悲しい例でもあります。
「マルコス・ロドリゲス」オオカミに育てられた少年
スペイン南部出身のマルコス・ロドリゲスは、7歳で山に取り残され、以後12年間をオオカミと共に生活しました。
彼の境遇もまた過酷でした。
3歳で母を亡くし、父に捨てられ、羊飼いに引き取られるも、その老人も早くに亡くなります。
以降、孤独になったマルコスは山中でオオカミの群れと接触し、共に暮らすようになったのです。
発見されたのは19歳のときです。
言葉を話さず、うなり声をあげ、完全に動物のような行動をとっていたといいます。
その後、都市に移住し建設現場などで働くも、社会に適応できず差別や搾取に苦しみました。
マルコスは後に「狼といた時が一番幸せだった」と語ります。
なぜなら、狼は彼を差別せず、家族として受け入れてくれたからだといいます。
彼の経験は、人間社会の野蛮さを照らし出す鏡でもあります。
現在は環境保護団体の支援を受けながら、講演などを通じて自然との共生や多様性の尊重を訴え続けています。
まとめ
動物に育てられた子供たちの物語は、決して珍事件や都市伝説ではなく、人間社会の矛盾や孤独の象徴として捉えるべきです。
これらの事例は、私たちが子どもや弱者に対してどのような環境を提供するべきかを考える上で、非常に大切な示唆を与えてくれます。
人間性は、生まれではなく「育ち」によって決まるのかもしれません。
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