それって本当に海外の料理なの?と思わず聞き返したくなる料理、思い当たるものはありませんか?
外国から伝わったはずの料理が、日本人の手によって独自進化し、時に本家超えとまで言われるようになった事例は数知れずあります。
今回は、そんな中でも特に「もう日本料理でいいのでは?」と話題の料理3選を紹介します。
麻婆豆腐
麻婆豆腐は、中国・四川省発祥の代表的な中華料理で、「麻(マー/しびれ)」と「辣(ラー/辛さ)」がガツンと効いた味が特徴で、花椒(ホワジャオ)や豆板醤をふんだんに使った本格派は、しびれるような辛さが魅力です。
しかしその強烈な辛さは、日本人の舌には少々ハードルが高かったのも事実でした。
そこで、日本の中華料理店が登場させたのが「マイルド麻婆豆腐」、辛さを抑えつつ、甜麺醤などを使ってコクと旨みを加えるスタイルが人気を博しました。
今やスーパーのレトルトや家庭の定番料理としても親しまれるほど定着、中には来日した中国人が「本場よりも日本の麻婆豆腐のほうが好き」と語るケースもあるほどです。
実際、日本の麻婆豆腐は、辛さを全面に出すのではなく、「ごはんに合う」「お子さまでも食べやすい」といった点で、ごはん文化に寄り添ったアレンジがなされているのが特徴となっています。
料理の本質を守りながらも、家庭の食卓に自然となじむように進化させた日本式麻婆豆腐は、もはや「中華風和食」と言っても過言ではありません。
チャーシュー
ラーメン好きの日本人にとって、「チャーシュー」は欠かせない存在です。
語源となったのは中国の叉焼(チャーシュー)ですが、実はその調理法や味付けは大きく異なっています。
中国式の叉焼は、甘辛いタレに漬けて焼き上げるローストタイプで、赤みを帯びた照りとスパイシーな香りが魅力です。
これに対し、日本で定着しているチャーシューは煮込みが基本、特に醤油・みりん・酒などを使った和風のタレでじっくり煮込み、とろけるような食感に仕上げます。
ラーメンのスープとの相性を考慮し、脂の加減や味の染み込み具合にまでこだわる日本のチャーシューは、ある意味「ラーメンの完成度を左右する要素」といってもいいでしょう。
最近では低温調理でしっとり仕上げたレアチャーシューや、炙りを加えた香ばしいタイプなど、バリエーションも豊富に進化しています。
本場中国の人々からも「これはこれでアリ」と評価され、逆輸入される例もあるほどで、まさに日本独自の進化型チャーシューが、世界のラーメンファンを魅了しています。
ナポリタン
ナポリタンその名前からは、いかにもイタリア料理のような響きを受けますが、実はれっきとした日本発祥の料理です。
誕生のきっかけは戦後まもなく、横浜の「ホテルニューグランド」で、米軍兵士が食べていたケチャップパスタをヒントに作られたのが始まりと言われています。
当初はトマトピューレを使用した高級志向の料理でしたが、その後、昭和の喫茶店文化の中で庶民的な味へと進化、ケチャップで炒めたスパゲティにタマネギ、ピーマン、ソーセージを加えた、甘酸っぱく懐かしい味わいが日本中で親しまれるようになりました。
ナポリに行ってもナポリタンは存在しませんが、日本では家庭の定番料理となっています。
最近ではレトロブームの影響もあり、再び注目を集め、名古屋では鉄板ナポリタンというご当地グルメにまで発展しています。
世界的にも「Japanese Spaghetti」として紹介され、特にアジア圏では日本食として浸透しつつあります。
イタリア人からすれば邪道かもしれませんが、日本人にとっては「ソウルフード」のひとつ、ナポリの名を借りた日本らしい工夫の結晶が、世代を超えて愛され続けているのです。
まとめ
海外の料理を取り入れつつ、独自にアレンジし日本人の味覚や食文化に合った形に進化させる、これは日本の食文化の得意技とも言える現象です。
麻婆豆腐、チャーシュー、ナポリタンはいずれも「本家」の要素を尊重しながらも、日本独自の工夫と創造性によって、まったく新しい料理へと生まれ変わりました。
もはやパクリという言葉では収まらない、リスペクトと再構築によって進化したこれらの料理は、日本の食卓に深く根付き、時には本家の人々までも唸らせるその味こそが、日本の料理文化の奥深さを物語っています。
これからも私たちの食卓には、そんな「日本風だけど世界に誇れる料理」がどんどん登場してくることでしょう。
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