2025年放送のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』では、盲目の大富豪・鳥山検校が、吉原の花魁・五代目瀬川を身請けする物語が描かれます。
このドラマをきっかけに、鳥山検校という人物に関心を持つ方も多いのではないでしょうか。
彼はどのような生涯を送り、どのようにして巨万の富を築いたのでしょうか。
また、瀬川との関係やその後の運命とは…。
鳥山検校とは何者か
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Via|Instagram @berabou_nhk(大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」公式より引用)
鳥山検校の「検校(けんぎょう)」とは、個人の名前ではなく、盲人の職能組織「当道座(とうどうざ)」における最高位の称号です。
日本では古くから盲人が音楽や鍼灸(しんきゅう)を生業とする職業集団を形成しており、室町時代以降、当道座という組織が確立されました。
江戸時代に入ると、幕府は当道座を統制し、盲人たちに「座頭金(ざとうがね)」という制度を通じて高利貸しを営むことを許可しました。
鳥山検校は、この組織の中で高利貸し業を営み、莫大な財産を築き上げ、当道座のトップとして権勢を誇る存在となったのです。
五代目瀬川との出会いと身請け
五代目瀬川(せがわ)は、江戸時代中期に吉原遊郭で最高位の花魁として名を馳せた女性です。
花魁とは、単なる遊女ではなく、教養や芸事にも優れ、客を選ぶことができる特別な存在でした。
彼女は「花の井(はなのい)」の名でも知られ、気品と美貌を兼ね備えた花魁として、吉原随一の人気を誇っていました。
そのため、彼女のもとには大名や豪商が列をなし、莫大な金を費やしてでも彼女と逢瀬を重ねたいと願う者が後を絶ちませんでした。
そんな五代目瀬川を身請けしたのが鳥山検校でした。
1775年(安永4年)、彼は1,400両(現在の価値で約1億8,000万円)という莫大な金額を支払い、彼女を遊郭から引き取ります。
この事件は「瀬川落籍事件(せがわらくせきじけん)」として世間の注目を集めました。
なぜなら、通常の遊女の身請け料は数十両から数百両程度だったからです。
1,400両という金額は当時としても破格であり、これほどの大金を支払ってでも瀬川を手に入れたいという鳥山検校の執念が見て取れます。
豪奢な生活と突然の転落
鳥山検校の財力の源泉は高利貸し業でした。
しかし、江戸幕府は当道座を保護する一方で、その権力が強まりすぎることを警戒し始めます。
特に、貸金業による高利の取り立てが社会問題化するにつれ、幕府は規制を強化していきました。
1778年(安永7年)、幕府は「悪質な高利貸しを取り締まる」という名目で、多くの検校たちの摘発を始めました。
このとき、最も標的とされたのが鳥山検校でした。
彼の貸金業は、厳しい取り立てを行うことで悪名高く、幕府からも目をつけられていたのです。
幕府の命令によって、鳥山検校の全財産は没収され、彼は江戸から追放されました。
つい先日まで大富豪として贅を尽くしていた彼が、一夜にして無一文となり、都から姿を消すことになったのです。
その後、彼がどこでどのような生活を送ったのかについての記録はほとんど残っていません。
しかし、これほどの巨額の富を持っていた人物が、わずか数年で没落するという事実は、江戸時代の社会の厳しさを如実に示しているといえるでしょう。
鳥山検校が没落した後、瀬川がどうなったのかについても諸説あります。
一部の資料では、彼女は別の資産家と結婚し、比較的安定した生活を送ったともいわれていますが、彼女が鳥山検校の転落後どこへ行ったのか、具体的な記録はほとんど残されていません。
また、「瀬川落籍事件」の反響は大きく、後の文芸作品にも影響を与えました。
検校という地位とその背景
「検校」とは、盲人たちの組織である当道座の中で最高位の称号です。
当道座は中世から続く組織で、盲人たちが鍼灸や按摩、琵琶演奏などの職業を独占的に営むことが許されていました。
江戸時代には、幕府の保護のもと、盲人たちは「座頭金」と呼ばれる高利貸し業も営むことが許可され、一部の検校は巨額の富を築くことができました。
しかし、高利貸し業による利権が膨らむにつれ、幕府は規制を強化し、鳥山検校のように財産を没収される者も現れたのです。
まとめ
鳥山検校は、盲人の最高位である「検校」として巨万の富を築き、吉原一の花魁・五代目瀬川を1,400両で身請けしたことで知られています。
しかし、豪奢な生活も束の間、幕府の高利貸し取り締まりにより全財産を没収され、江戸から追放されるという劇的な転落を経験しました。
彼の波乱万丈な人生は、江戸時代の社会構造や盲人たちの地位、そして人間の栄枯盛衰を考える上で興味深い題材となっています。
権力と財力の儚さを象徴する物語でもあ、大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』でどのように描かれるのか、今後も楽しみですね。
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